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2024-11-07

綾瀬はるかさんと大沢一菜さんが「仲良くなったきっかけは虫捕り」映画『ルート29』森井勇佑監督にインタビュー


 

11月8日(金)から公開となる映画『ルート29』は綾瀬はるかさん演じる他者と必要以上に交わろうとしない主人公のり子が風変わりな少女ハルを連れて、姫路から鳥取までの国道29号線を旅する、ちょっと不思議で優しい時間が流れるロードムービーです。旅先での様々な出会い、次第に深まる2人の絆によって喜びや切なさなどかけがえのない感情でのり子の心が徐々に満たされていく様子が描かれています。映画『こちらあみ子』で注目される森井勇佑監督がメガホンをとり、のり子の相棒ハルには『こちらあみ子』で強烈な個性を放った大沢一菜(おおさわ かな)さんが演じています。絵本のような幻想的な世界を支えるのは高良健吾さん、伊佐山ひろ子さん、河井青葉さん、市川実日子さん、渡辺美佐子さんなど味わいのあるキャスト達です。

公開を前に森井勇佑監督が名古屋でインタビューに応えてくれました。綾瀬はるかさんを主演に迎えた理由、撮影秘話、大沢一菜さんについてなどを話しました。(取材日:10月16日)

オファーのきっかけは「何も背負っていない状態、何者でもない綾瀬さんが観たい」

映画『ルート29』は誰かと交わることなく自分の生活を淡々と生きている主人公・のり子が、清掃の仕事で入った病院で出会った患者の「自分の娘ハルを見つけて、会わせてほしい」という願いを叶えるために衝動的に行動。ハルを見つけたのり子は2人で国道29号線を辿ってハルの母親に会うために向かうロードムービーです。旅で出会った不思議な出来事、様々な人によってのり子の心模様に変化が生じていく様子も描かれ、絵本をめくるような優しい肌触りの物語です。

主人公・のり子を演じるのは綾瀬はるかさんです。綾瀬さんにとって1年弱の長期のお休み明けに挑む作品が本作『ルート29』となります。次の作品は、縁を感じるものや運命を感じるものをやりたいと思っていたとのことで、森井監督の前作『こちらあみ子』が大好きだったことと、あみ子役の大沢一菜さんに会ってみたいという気持ち、そして脚本が描く優しい世界にスッと入っていけそうだとオファーを受けたそうです。

森井監督に綾瀬さんをキャスティングした経緯を聞くと「僕の勝手なイメージとして綾瀬さんは、どこにも属さず、1人で立っている感じ。のり子のキャラクターとマッチすると思いました」と述べました。綾瀬さんのこれまで作品を多く観てきたとも言い、「『海街diary』『レジェンド&バタフライ』などで、背負うものが大きい役をやられていた印象で、天下一品にうまいと思っています。しかし今回は何も背負っていない状態…何者でもない状態の綾瀬さんが観たいと思ったのがオファーしたきっかけかもしれません」と明かしました。

森井監督が「これまでの綾瀬さんで、このような役柄を見たことがなかった」と自信を見せるように、「え?綾瀬さん⁉」と言いたくなるような雰囲気です。実際にお仕事をした綾瀬さんの印象を森井監督は上手く表現できず「形容が難しいんですよね。この魅力は何と言ったらいいんだろう…特別な人だと思います。だから綾瀬さんで本当に良かった」と噛みしめるように話しました。そして前日に大阪で行われた試写会と舞台挨拶の反応について「お客様からいろいろ話を聞きました。いい時間でした」と手ごたえを感じた様子を見せました。

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撮影中の綾瀬さんとのやり取りを尋ねると森井監督は「初日だけ少し話をして、あとはどんどん綾瀬さんが役を掴んでいった感じでした」と振り返り、監督自身がその場で何を感じるかを大事にしたいと考えて「本人に見つけてもらいたい」というスタンスだったと述べました。また現場にいる綾瀬さんのことを「役のまま現場にいる感じでなく、撮影になるとのり子になる感じでした。役を作るっていうニュアンスじゃなかったと思うので、スイッチのオンオフは曖昧だったように思います」と述べ、旅の相棒・ハル役の大沢一菜さんについても「どこからが大沢で、どこからがハルなのかというのは曖昧にしているところがあります」と自分の求めるやり方がそうなのかも知れないとまとめました。

一緒に旅をするハル役の大沢一菜さんと綾瀬さんは初共演。お互いにどんな感じだったのかと聞くと森井監督は「綾瀬さんは大沢さんを子ども扱いするタイプじゃないんですよ。大沢さんは綾瀬さんのことがすごく好きだったらしいんです。好きだからこそ照れていて、はじめは2人に距離感がありました」と教えてくれました。街で撮影して、山に入っていくと2人の関係に変化があったと振り返り「山に入っていくに従って虫とか出てくるんですよ。僕らが撮影している裏で、2人が虫捕りとかを始めて、それがきっかけで仲良くなっていきました」と笑顔を見せました。

ダンゴムシが綾瀬さんの足の甲を歩いたり、その他の生き物が印象的に登場したりする本作。その意図を聞くと「ダンゴムシは『こちらあみ子』で撮ってみて、気に入ってしまったんですよね。ダンゴムシのゆっくりした動きが、この作品にピッタリだと思いました」といたずらっぽく笑いました。また「僕は人には宇宙があると思っています。『1人1人の宇宙を大事にしている2人が一緒に歩いているんです』という風に綾瀬さんにお伝えしていました」と考えを共有して撮影したと語りました。「人以外に木や虫など、あらゆるところに宇宙があると考えています。人間と同じように撮りたいという気持ちがありました」とも述べ、劇中の不思議で魅力的な登場人物も含めて、前作『こちらあみ子』にも通底する森井監督の宇宙観を感じさせました。

2年ぶりのタッグとなった大沢一菜さんの成長に目を細める 国道29号線の交差点シーン秘話

映像の点で、ところどころデビッド・リンチ監督の作品を連想したと記者が話すと、森井監督は「デビッド・リンチ監督はめちゃくちゃ好きで、意識してはいませんでしたけど、自動的に影響されているかもしれません」と二コリ。森井監督のルーツの一つが垣間見えました。本作『ルート29』は森井監督にとって『こちらあみ子』と同じく脚本も自身で手がけた2作目です。この脚本を書き始めたきっかけは中井太一さんが書いた詩集「ルート29、解放」です。脚本にするまでの経緯について森井監督は「最初に読んだ時、本当にいいなと思いました」と述べ、「全体のイメージをモチーフに人物を立ち上げて、背景を考えて…。ルート29ということで、プロデューサーとの話し合いでロードムービーというお題も出ました」と話しました。実際に国道29号線を車で走ったそうで、「街から山になっていくんですけど、本当にずっとまっすぐで途中で曲がる必要がない。そこが面白いと思いました」と一本道であることが印象的だったと言いました。

登場人物のハルは大沢一菜さんの当て書きだと語る森井監督は「あみ子よりも本人に近いような感じかもしれません」と話しました。のり子については、前作の『こちらあみ子』の時は主人公が1人で子どもだったことに対して、今回は初めて大人を主人公に加えたと語り、当初は誰をキャスティングするか考えていなかったと明かしました。国道29号の最後の交差点で泣くクライマックスのシーンについて、画面に入っていない遠い所から綾瀬さんのタイミングでスタートできるように段取りして撮影したことを話してくれました。心が空虚だったのり子が旅を通して変化し、ハルへの思いをほとばしらせる姿に胸が熱くなります。

『こちらあみ子』から2年と空けずに再タッグを組む大沢一菜さんについて、前回と今回の印象の違いを尋ねると森井監督は「どちらも反抗的ですね」と笑いました。「前回は”撮影なんかやめて、遊びたい”という反抗で、今回は役者としての自覚が芽生えている状態だったんで違う反抗でした」と鷹揚な構えを見せ、目を細めました。真意を伺うと「従順な子どもを撮ってもあまり意味がないと前作で学んだので、反抗的であるほど生き生きしたものが撮れるんですよ」と話し、「いずれにしても(大沢さんに)反抗してもらいたいなと思っていたので…今回も反抗的でした」とおおらかに答えました。森井監督が惚れ込む大沢さんの今後の活躍も期待大です。

今後描きたいテーマについて聞くと「これまでの2作はかなり自分の感覚の延長線上で、自分のなかでもテーマ化ができていないんですよ。これからはテーマを考えるようにしなきゃいけない」と答え、「一つ作るとゼロになるので、考えなきゃいけないな」と再度口にしました。大沢さんとの三部作の有無については明言せず、次の日にある東京で行われる舞台挨拶が楽しみですと結びました。優しい時間が流れ、綾瀬はるかさんの新たな魅力が感じられる映画『ルート29』をぜひ、劇場でお楽しみください。

作品概要

映画『ルート29』

11月8日(金)よりミッドランドスクエア シネマほか全国ロードショー

監督・脚本: 森井勇佑

出演:綾瀬はるか、大沢一菜、伊佐山ひろ子、高良健吾、 原田琥之佑、大西力、松浦伸也 /河井青葉、渡辺美佐子/市川実日子

原作:中尾太一「ルート29、解放」(書肆子午線刊)

主題歌:「Mirror」Bialystocks(IRORI Records / PONY CANYON)

配給:東京テアトル リトルモア

2024年|日本|上映時間:120分|G

©2024「ルート29」製作委員会

公式HP https://route29-movie.com/

公式X https://twitter.com/route29movie


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