「学芸会の部分はドキュメンタリー的な感覚」映画『おいしい給食 Road to イカメシ』主演の市原隼人さん、綾部真弥監督に名古屋でインタビュー
5月24日から全国公開となる映画『おいしい給食 Road to イカメシ』は市原隼人さんが主演する人気シリーズ「おいしい給食」の劇場版最新作です。本シリーズは、1980年代の中学校を舞台に、給食をこよなく愛する数学教師:甘利田幸男(市原隼人さん)が《給食道》を邁進する姿が描かれ、昨年10月のシリーズ3弾では舞台を北海道に変えて、時代も平成に突入。給食マニアの生徒:粒来ケン(田澤泰粋さん)との激しい給食バトルが描かれていました。劇場版も市原さんを筆頭に、大原優乃さん、栄信さん、六平直政さん、高畑淳子さん、小堺一機さん、愛知県出身のいとうまい子さんなど魅力的なキャストが集結し、コメディ要素もふんだん盛り込まれ、それぞれが生き生きと演じています。
綾部真弥監督と主演の市原隼人さんが、公開に先立ち、名古屋でインタビューに応えてくれました。映画『おいしい給食 Road to イカメシ』の企画の経緯、生徒役の子供たちと向き合った市原さんの想いなどを聞きました。(取材日:2024年4月6日)
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市原隼人さん「根底はコメディですが社会派でもある」「すべてを尽くそうと腹を決めて現場に入りました」
映画『おいしい給食 Road to イカメシ』は、函館に異動後も《給食道》をひた走る中学教師:甘利田が、給食マニアの生徒:粒来ケンと“どちらが給食をより美味しく食べられるか”というバトルを繰り広げる中で、ある危機に見舞われる…という空前絶後の給食スペクタクルコメディです。シリーズ第3弾ドラマのキャストに加え、劇場版では町長として石黒賢さんが出演します。
第3弾の企画が届いた時の気持ちを聞くと、市原さんはしばらく考え、甘利田の役は、精神的にも体力的にもとてもハードなので、「1ヶ月くらいは脚本が読めませんでした」と答えました。第3弾を創る意義についても熟考したそうで「コメディですが社会派でもある。しっかりしたメッセージをお客さまに届けられるようにしなければ」と『おいしい給食』は変わらずに信じられるものの象徴でありたいと考えていたことを明かしました。さらに市原さんは「滑稽な姿を見せても、好きなものを好きだと胸を張って謳歌する勇気を持つ甘利田を観ていただいて、人生の活力にしていただきたい」と強い気持ちがあったそうで「すべてを尽くそうと腹を決めて現場に入りました」と並々ならぬ決意でのぞんだことを質問者の目をしっかり見つめ、言葉を丁寧に紡ぎながら語りました。
綾部真弥監督は『劇場版 おいしい給食 Final Battle』(2020年公開)の公開直後に緊急事態宣言が出て打ち切りになったことを振り返り「パート2を作って満席の劇場で上映したいという夢ができました」と当時の気持ちを口にしました。『劇場版 おいしい給食 卒業』(2022年公開)の撮影がコロナ禍で苦労したこともあったと言い「第3弾は第1弾・第2弾以上に面白くできるのだろうかと…もう何も出せませんっていうくらい絞り切りました。やるからには、今までで一番面白い映画にしたいと非常にプレッシャーとの戦いでした」と話しました。
校歌斉唱のダンス誕生秘話を語る「監督に野放しにしてもらった」給食前の校歌・喜びの踊りシーンを振り返る
映画『おいしい給食 Road to イカメシ』はテレビシリーズから始まった物語ですが、ドラマを観ていなくても楽しめる作品です。懐かしい給食メニューや、地域独特の給食スタイル、給食を食べた経験がある人には「あるある」と頷きたくなるクラスの雰囲気が描かれ、その世界観に没入できることでしょう。「おいしい給食」シリーズに欠かせないのは給食前の校歌の斉唱シーンです。主人公の甘利田先生は、食事への感謝と迸る喜びをこめて歌い踊ります。本人は給食に関心がない風を装っていますが、生徒達は受け入れ、もはや無反応というのもシュールなおかしみがあります。曲が終わると同時に拳がデスクにあたるというお約束もあり、給食のシーンは一番の見どころです。
甘利田先生の無邪気な一面が見られる校歌斉唱のダンスはどのように生まれたのかを聞くと、市原さんは「シーズン1の最初は今ほど踊っていませんでした」と話しました。綾部監督から動いたらどうなるかと問われ「やってみます」と踊りのきっかけを話しました。綾部監督に当時のことを聞くと「給食好きがバレてはいけない設定で、クラス全員の子ども達と校歌を歌ってから『いただきます』というくだりでした。シーズン1の初日に市原君が突き抜けた甘利田を演じていて、2日目の給食シーンで校歌をただ聞いているだけでは面白くないと思って、校歌を歌う中で給食好きが漏れ出ちゃってリズムに乗っちゃおうか…と伝えました。市原君は振付を全部考えてくれました」と甘利田先生のダンスが生まれた時の様子を教えてくれました。校歌の後のお約束の動作について市原さんは「アドリブです。「おいしい給食」には、毎回、こういうシーンがあるよね、というチャームポイントのようなところを作りたくて、脚本には無かったんですが」とニッコリしました。
給食でのダンスについて市原さんは「信頼あってのことです」と長くやっているシリーズだからこそ生まれているものだと話し「僕のやりたいようにと野放しにしていただいて…」と綾部監督と目を合わせました。校歌の歌詞に函館が入っていることから「北海道になぞらえてソーラン節などの動きを入れていました」と、毎回、物語にあった動きを考えていることを話しました。綾部監督は市原さんの振付に絶大な信頼を寄せていると言い「ここは落ち込んでいる前提だからとか、ここはニュートラルで、などお互いに確認だけはしていました」と付け加えました。
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物語の柱、学芸会シーンに注目。ホワイトマンとは?!舞台裏でも市原さんは先生だった
映画『おいしい給食 Road to イカメシ』では教師たちだけでなく、生徒たちも個性豊かで魅力的です。甘利田先生が担任する1年1組の生徒たちが学芸会の発表に臨む様子が物語の柱として描かれる中で、生徒たちそれぞれのキャラクターが見えてきます。学芸会という行事を物語にいれるアイデアがどのように浮かんだのかを聞くと綾部監督は「企画のトッププロデューサーで、なおかつ脚本も書いている永森裕二さんが最初から劇中劇の”ホワイトマン”をテレビドラマの伏線にして映画に持っていこうと考えていたんです」と明かしました。
綾部監督は「最初は笑っていた大人たちが、子どもたちの芝居に引き込まれるという部分はこの作品の山場になると思いました。”ホワイトマン”は、好きなモノは好きだという思いを曲げないことの象徴です。甘利田と粒来と(シーズン1・2に登場した生徒)神野という3人の関係性も描けるし、オールドファンにも喜んで観てもらうことができるなと思いました。学芸会の衣装も衣装部の人が独自に考えてくれました。本当にファンに向けてというか、映画の核を作りたいのと、総合的な意味で学芸会のシーンを入れたかった」と熱を込めて話しました。また”ホワイトマン”という劇の台本は全編きちんと作ってあることも明かし「子どもたちを集めて劇場でやりたいくらいの作品です」と自信を見せました。
市原さんは「テーマの一つである”全員が主役だ”という思いがありました」と学芸会の部分に並々ならぬ思いがあったことを話し、「生徒役の子供たちとドキュメンタリー的な感覚で向き合いたいと思い、本番に向かうまでの時間はこれまでの『おいしい給食』とは違うギアを入れて真剣勝負でした」と力強く語りました。市原さんはオーディションで選ばれた生徒役の俳優たちについて「大事な青春の2か月を共にさせていただくわけですから、人として、役者として何か土産話や経験を持ち帰っていただきたい」という気持ちがありましたと答えました。さらに「物事の根源を探る中で見えてくるものの大切さや、作品に対してどうアプローチするか、自分の存在意義についての話をしてから撮影を始めていました」と生徒たちと真摯に向き合っていたことを教えてくれました。
学芸会は2日間に渡って撮影が行われ、綾部監督は「1日目は市原君の出番がないのに、現場に来てくれて、子ども達に声を掛けて励ましながら見てくれていたんですよ。市原君のそういう姿があったからこそ、引き出せたシーンです」と感謝の気持ちを伝えました。市原さんは「一生懸命がんばっている子どもたちの姿はドキュメンタリーのように見ていただけたら嬉しいです」とアピールしました。
綾部真弥監督「甘利田先生から僕も教わっている気がします」
市原さんは「令和の時代に甘利田を演じる意味は何かと考えました。台詞の中に『甘利田はシンプルだけど、世の中はシンプルではない』とありますが、世の中は理不尽なことや矛盾だらけでシンプルじゃありません。ですが、…甘利田はシンプルなんです」と話しました。加えて「彼のシンプルな台詞に核心をつかれるところがあって、どんな時代になっても変わらず、ぶれないアイデンティティというものを持っている憧れのような人物になりました」と述べました。最後に「甘利田先生のように、人生を謳歌していいんだなと純粋に感じて頂けたら嬉しいです」とまとめました。
綾部監督はシリーズを続けていくうえで気を付けていることとして「甘利田先生は給食が大好きで、一生懸命おいしく食べて、子どもに負ければ負けたと認める姿は変えたくないです。マイナーチェンジする部分のバランスを考えて、脚本作りから現場の芝居や仕上げを含めて気を付けています」と答えました。「一つのことを愛するだけで彩りが生まれる、豊かになるということを甘利田先生から僕も教わっている気がします」と主人公の甘利田幸男について語りました。気になる次回作については「僕も市原君も、なかなか意欲がアレなので」と明言しませんでしたが、期待したいところです。
作品概要
5月24日ミッドランドスクエア シネマほか全国公開
出演:市原隼人 大原優乃 田澤泰粋 栄信 石黒賢 いとうまい子 六平直政 高畑淳子 小堺一機
監督:綾部真弥
製作総指揮:吉田尚剛
企画・脚本:永森裕二
プロデューサー:岩淵規
公式HP: https://oishi-kyushoku3-movie.com
2024/日本語/5.1ch/ドルビーデジタル/111分/Ⓒ2024「おいしい給食」製作委員会