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2024-01-30

「あのスニーカー、うちにあります」観客の質問から意外な事実が発覚!?映画『彼方の閃光』眞栄田郷敦さん、半野喜弘監督が名古屋で舞台挨拶に登壇


 

全国順次公開中(愛知では1月19日から2週間限定で公開)の映画『彼方の閃光」は、少年時代に手術で視力を回復したものの色彩を感じられない主人公・光が長崎と沖縄の戦争の記憶を辿るロードムービーです。主人公の原案・脚本・音楽などを手がけるのは『パラダイス・ネクスト』などの半野喜弘監督。主人公の光を演じるのは本作『彼方の閃光』が初主演映画となる眞栄田郷敦さんで、光が出会う人や風景によって考えが深まっていく様子が描かれています。共演は国内外の作品に精力的に出演する池内博之さん、注目のラッパー/アーティストのAwichさん、フィリピンの巨匠メンドーサ監督の最新作『義足のボクサー』(2020年)主演の尚玄さん、伊藤正之さん、加藤雅也さんなど多彩な顔ぶれが揃っています。

名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマで公開記念の舞台挨拶が行われ、映画の上映後、余韻にひたる観客の前に主演の眞栄田郷敦さんと半野喜弘監督が登壇しました。作品への思いを語るほか、観客からの質疑に答えました。名古屋の人はシャイだと聞いていた半野監督と眞栄田さんは意外にも積極的な観客に笑顔を見せ、映画鑑賞後の観客との交流を楽しんでいました。(取材日:2024年1月28日)

半野喜弘監督「色んな困難に立ち向かった映画、全員で作ったって感じが強いです」

 映画『彼方の閃光』は、手術によって視力を取り戻したものの色彩を感じられない主人公:光(眞栄田郷敦さん)が戦後の日本写真界を牽引する写真家:東松照明(1930年名古屋市生まれ)の作品に導かれて行った長崎で自称革命家の男:友部(池内博之さん)と出会い、共にドキュメンタリー映画の製作のために長崎・沖縄の戦争の痕跡を辿るロードムービーです。長崎のキリスト教徒の歴史や原爆の記憶、沖縄の摩文仁の丘など、戦争の傷跡がしっかりと描かれ、また放射能、沖縄の基地、辺野古など現在も残る問題にも触れられています。沖縄戦で大勢が逃げこんだ轟壕や、「沖縄戦の図」を直視する主人公:光と演じる眞栄田さんが同一化したような瞬間が多々あり、フィクションでありながらドキュメンタリーのような雰囲気も感じられる作品です。

道中、祖母から戦争体験を聞いていた詠美(Awichさん)や沖縄と家族を愛する糸洲(尚玄さん)など心に傷をかかえながら逞しく生きる人々との出会いを通して、光の眼に映るものとは何か…。光の視点に合わせて、モノクロ―ムで描かれる映像に新鮮さを感じる人も多いでしょう。そして、2070年の71才になった光(加藤雅也さん)が生きる世界も興味深く描かれています。

映画の余韻が漂う劇場に主演の眞栄田郷敦さんと、半野喜弘監督が登壇しました。二人ともオールブラックのいで立ちで非常にスタイリッシュ。「カッコいい」という声が客席から漏れていました。半野監督は「この映画、本当にいろんな困難に立ち向かった映画で、公開できて皆様に見ていただけて本当に良かったです」と挨拶しました。続いて眞栄田さんは「昨日から沖縄、福岡、大阪、名古屋が最後の舞台挨拶なんですが、一緒に盛り上げていければ嬉しいです」と話しました。名古屋メシの話題になると眞栄田さんは「めっちゃ好きですよ。ひつまぶしとか天むすとか」と笑顔を見せました。監督は久々の名古屋とのことで「音楽をやっているので、昔、コンサートとかでよく来ていました」と話しました。

撮影中のエピソードについて聞かれた眞栄田さんは「そうっすね…全部」と話すと半野監督は「たくさんあるもんね」と助け舟を出し、ポスターを指しながら「俺としては、屋上のシーンです。手前味噌ですけど良いシーンだと思います」と自信を見せました。「台本にないシーンです。屋上に行ったらすごく良くて、郷敦を呼んで、思いつきで撮りました。光は空に向かって、自分が何色か分からない何かを塗るよねってカメラマン含めて3人でアドリブで撮ったシーンです」とにやり。眞栄田さんも「かなり長い時間、自由に回していましたね」と振り返りました。半野監督は「僕自身が映画の原案と脚本をしているということもあって、自分たちで話し合って映画を作れる感じだったので、僕が監督というよりは全員で作ったって感じがすごく強いですね」と力強く語りました。

「あのスニーカー、うちにあります。」と眞栄田郷敦さん 衣装やモノクロ映像へのこだわりを語る 半野喜弘監督

観客からの質問タイムになると、たくさんの手が挙がり、嬉しさと驚いた表情を見せた眞栄田さんが勢いで最初の1人目を指名。本作『彼方の閃光』を5回鑑賞したという熱心な方から、劇中の登場人物たちが着る個性的な服をどうやって調達したのかと質問がありました。また主人公が履いていたスニーカーが可愛かったという感想を聞いて半野監督は「あのスニーカーは作ったんです。コンバースだったかな…手を加えて」と答えると眞栄田さんは「あのスニーカー、うちにあります。何か1個記念にと思って貰いました」と明かし、半野監督は「え!郷敦んとこにあるの?」とビックリ。二人のフランクなやり取りに会場が沸きました。

スタイリストとしても本作に関わる半野監督は「光の衣装のいくつかは僕のです。サングラスも僕が普段掛けているものです」と述べ、「友部が着ているサファリベストみたいな服、あれは僕が25年くらい着続けたものです。誰かが着ているという服の時間経過って大事で、なかなか思い通りにやるのは難しいんです」と衣装のこだわりを語りました。

また半野監督は「赤と青ってモノクロにすると同じような色に見えちゃったりします。衣装、ロケーションも含めて光の反射の加減とか様々考えて、一旦モノクロにしてみて判断するようにしました」と映像面でも妥協しない姿を見せました。

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「名古屋の人はシャイと聞いていましたが…ガセでしたね」観客からのたくさんの質問に楽し気な様子

 池内さんとのベッドシーンについて「どんな気持ちで芝居したのか」と聞かれた眞栄田さんは「自然な気持ちでやっていましたね。僕は違和感なく、池内さん…男性との恋愛だけど抵抗がなかったです」と率直に話しました。半野監督は「撮影する側も何らかの違和感があるのかなと撮影を始めましたが、何にもなかった。郷敦と池内さんの二人に違和感がないし」と述べ「だから正直、男女のシーンのほうが緊張したね。男性同士のほうが割とフランクでした」と明かしました。次々に質問の手が挙がる状況に半野監督は「名古屋の人はシャイだって話を聞いていましたがガセでしたね」と嬉しそうな表情を見せ、観客とのコミュニケーションを楽しんでいるようでした。

眞栄田さんの作品を全部見ているという方の「どの作品も郷敦さんじゃなくて本当に役の人物のように感じます。今回どのように”光”になったのか気になります」という熱い質問に対して眞栄田さんは「序盤は色彩がない状況で、世の中の良さとか物理的に見えていないし、人の温かさとかも分からない部分もあって、世の中に対して尖がっているという感じで演じました」と話し「長崎に実際に行き、色んな人や風景、美しいものを見るなかで変化していったと思いますが、長崎・沖縄の撮影は自分も初めて行く場所が多くて…ドキュメンタリーのような感じでした。撮影後半は光と一緒というか、光なのか自分なのか分からなくなる瞬間が多かったです」と振り返りました。

白熱する劇場内、矢継ぎ早に質問は続きます。「音がとても印象的でした。音や音楽についての工夫は?」という質問に半野監督は「人間の脳は計算する速度とカロリーの限界があるそうです。カロリーの多くは画像情報で、それを遮断することで耳などの側に脳の計算能力が行くようです。モノクロパートにもしも色彩があったら、友部の台詞の情報量って咀嚼しづらい可能性があって、モノクロだからこそ共有できたのではないかと思います」と話しました。「ま、楽器奏者もそうだけど、郷敦もサックスやるから分かると思うけど真剣に音をとらえる時って目をつぶる。要するに遮断したほうが耳が敏感になりますね」とまとめると眞栄田さんも大きく頷きました。

眞栄田郷敦さん「長く残って広く皆さんに伝われば」「大きなスクリーンで、いい音で是非観てほしい」3月末まで全国で上映

最後の質問となり、13歳の娘さんがいる方が「この映画を私だけが観て、娘がズルいと言っています。娘に質問したいことを聞いてみたらDVDなどの展開があるのかという返事がありました。どうでしょう?」と質問を投げかけると、半野監督は「うーん、まだ分からないです。長く残る作品にしたいという話をしていて、配信なのかDVDなのか分かりませんが残したいですね」と答えました。そして「でも劇場で見るといろんなものを感じて貰えると思う」と重ね、眞栄田さんも同意しました。

何かに気づいた様子の半野監督は「R15だからか!13歳…観られませんね。出演していた男の子もこの作品、観られていないんですよ」と明かすと眞栄田さんは「年齢がね…彼も観たがっていました」と残念がりました。半野監督は「僕は何歳を子どもと言っていいのか分からないけど、本当はこの年代にこそ見てもらいたいと思っています。でも、映画界のルールがありまして…」と歯痒そうにこぼしました。

最後に眞栄田さんは「この作品、本当に長く残って広く皆さんに伝わればいいなと思います。配信やDVDなど実現したいのですが、3月末まで全国で上映しています。劇場で、大きなスクリーンで、いい音で是非観てほしい作品です」と熱いメッセージを送りました。半野監督は「この映画はストーリーから導き出される答えを提示するのでなく、観客の方々が対話するような映画にしたいとチームで作りました。僕たちが持っている”日常”の大切さ、それをどうやって守るべきかということが少しでも人の心に届けば…と思っています。よろしくお願いします」とアピールしました。

作品概要

映画『彼方の閃光』

2024 年 1 月 19 日(金) ミッドランドスクエア シネマ ほかにて公開

監督・脚本・原案・音楽・スタイリング:半野喜弘

出演:眞栄田郷敦/池内博之/Awich/尚玄/伊藤正之/加藤雅也

配給:ギグリーボックス 2022 年/日本/169 分/R15+

©2022 彼方の閃光 製作パートナーズ


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