若き日のデヴィッド・ボウイを描いた映画『スターダスト』野中モモさんが語る作品の魅力
10月8日より伏見ミリオン座で公開となる映画『スターダスト』はデヴィッド・ボウイの若き日の姿と彼の最も有名な別人格“ジギー・スターダスト”の誕生を描いた作品です。世界的大スターになる前、アメリカで自分が全く世間に知られていないことを知り、様々な人物やカルチャーと出会うボウイ。兄の病気に悩む姿や“ジギー・スターダスト”を生み出すきっかけとなった瞬間の舞台裏などを観ることができます。
「デヴィッド・ボウイ ─変幻するカルト・スター」(ちくま新書)の著者であり、本作に造詣が深いライター・翻訳家の野中モモさんにリモートでインタビューを行い、映画の感想や見どころ、デヴィッド・ボウイの魅力などをお聞きしました。(取材日:2021年10月4日)
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デヴィッド・ボウイ愛溢れる野中モモさんが語る映画『スターダスト』の魅力
映画『スターダスト』は世界的大スターになる前の若き日のデヴィッド・ボウイを描いた作品です。メガホンを取るのは『背徳の預言者 ウォレン・ジェフス』などのガブリエル・レンジ、『ブルックリンの恋人たち』などのジョニー・フリンがボウイを演じています。1972年にアルバム「ジギー・スターダスト」を発表する前年、1971年に「世界を売った男」をリリースした24歳のボウイがイギリスからアメリカへ渡り、自分が全く世間に知られていないことを知り、さまざまな人物やカルチャーとの出会いを経て、“ジギー・スターダスト”を生み出すきっかけとなった瞬間の舞台裏、キャリアのターニングポイント、それに関わった人たち、そして彼の内面と心の葛藤、最先端を見つめる彼の変化を描いています。
2017年東京都内で開催された「DAVID BOWIE IS」展覧会の図録翻訳を担当し、「デヴィッド・ボウイ ─変幻するカルト・スター」(ちくま新書)の著者であるライター・翻訳家の野中モモさんは映画『スターダスト』について「売れるまで何年もかかっているデヴィッド・ボウイが上手くいく直前を切り取った映画だと思います」と話し「初期のデヴィッド・ボウイは面白いと思っています。初期のボウイについてもっと知られてほしいので、この映画がいいきっかけになればと思っています」と映画を紹介しました。
映画の冒頭で「事実にほぼ基づく物語」という字幕が出るのですが、監督と脚本をつとめたガブリエル・レンジは本作について「とても現実的な映画だと思うが、スペキュレイティブ・フィクションでもある」と語っています。スペキュレイティブ・フィクションとは現実世界と異なった世界を推測、追求したものという意味です。野中さんに「この映画はどの程度、事実なのか?」という質問をしたところ「伝え聞いていたことから膨らませた感じなのかなと思いました。もしかしたらこんな場面もあったかもしれないなと想像を促してくれる作品です」と答えました。
15㎏の減量をして若き日のデビット・ボウイを演じたジョニー・フリンについて野中さんは「デビット・ボウイはカリスマ性のあるアーティストなので、彼を演じるのは難しかったと思います。無理なことに挑戦して、叩かれちゃってかわいそうですよね。細長くてカッコいいですよ!鼻筋がカッコいいですよね」と優しくフォローしていました。映画の中でデビット・ボウイがドレスを着ている姿を観られることを挙げて「アメリカツアーに着ていったということを文字で読んでいたもの、写真でしか見ていなかったものが動くとこんな感じなのか、あの服を普段来ているとどんな感じなのかが知れて楽しかったです」と感想を教えてくれました。デヴィッド・ボウイのライブ映画『ジギー・スターダスト』が2022年1月7日よりBunkamura ル・シネマほかにて公開されることが決定していることもあり、野中さんは「(本作で)ジギーのステージを映像であまり映さなかったのは正解ですよね。ボウイの曲がかからないのも、ボウイらしいなと思いました」と話しました。
野中さんは映画『スターダスト』は駆け出しのアーティストが成功を目指してもがいている状態の青春映画であると話し「評判が悪くてもあきらめずに自分の道を行く姿勢は、いろんな人を励ますと思います」「半世紀前の70年代の時代の空気、エンタテインメントの世界、今とは違う時代の空気を感じられるのが魅力だと思いました」と映画の魅力を語りました。
作品概要
10月8日(金)伏見ミリオン座他で公開
出演:ジョニー・フリン、マーク・マロン、ジェナ・マローン他
監督:ガブリエル・レンジ
© 2019 SALON BOWIE LIMITED, WILD WONDERLAND FILMS LLC