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2025-12-18

テカポ湖で撮影された奇跡のラストショットの裏話 映画『楓』福原遥さんと行定勲監督に名古屋でインタビュー


 

12月19日(金)より全国公開となる映画『楓』は4人組ロックバンド・スピッツが1998年にリリースした楽曲「楓」を原案に、福士蒼汰さんと福原遥さんのW主演で映画化された作品です。福士さん演じる事故で双子の弟を失った涼と福原さん演じる弟の恋人・亜子。大切な人を亡くした2人が「秘密」を抱え、互いに真実を言えないまま惹かれあっていくラブストーリーです。監督は映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年公開)の行定勲さんがつとめ、喪失と再生の物語を描きだしました。劇中には“彗星”や“天体”が物語の重要なモチーフとして登場。世界に3個所しかない星空保護区ゴールドティア(最高ランクの金賞)であるニュージーランドのテカポ湖での撮影も行われました。

公開に先立ち、ミッドランドスクエアシネマ(名古屋駅前)で開催された舞台挨拶付き上映会の前に行定監督と福原さんがインタビューに応じてくれ、作品のみどころと合わせて、テカポ湖で撮影された奇跡のラストショットなど撮影エピソードを聞かせてくれました。(取材日:2025年12月11日)

行定監督「楓の花言葉“遠慮”は運命的な出会い。とても日本的な題材になる」

映画『楓』は長い間、多くの人に愛され続けているスピッツの名曲「楓」を原案に、高橋泉さんが脚本をつとめ、行定監督がメガホンをとったラブストーリーです。行定監督は「20年前の『世界の中心で、愛をさけぶ』は喪失を乗り越えていくとはどういうことか、これから先も続いていく人生をどう生きていくかという映画でした。今回も喪失をどう乗り越えていくかということは同じですが、双子であることにより心情が複雑で非常に奥深い。亜子と涼、2人とも喪失している。そこに共感性を持たせることで、一気にこの物語の感情が幾重にも見えてくる」と話しました。

また、楓に「遠慮」という花言葉があることから「とても日本的な題材になると思いました。ラブストーリーで“遠慮する”という感情を描いた日本映画は意外とありません。踏み込めない遠慮というものをちゃんと持って向き合おうとする姿にひた向きさみたいなものがあるわけですよね」と作品のアイディアを膨らませていったことを教えてくれました。“遠慮”という言葉は運命的な出会いだったと話す監督。涼と恵の間にある兄弟としての感情や登場人物それぞれが秘密を抱えたまま本当のことを言い出せずにいる感情など、相手に気を遣うことで生じるすれ違いを劇中で観るたびに切なさが増します。

事故で双子の弟を失った涼を演じる福士さんとともに主演をつとめる福原さんは、弟の恋人・亜子を演じます。大切な人を亡くし、互いに真実を言えない「秘密」を抱えながら惹かれあっていく役柄に福原さんは「亜子が取る“選択”を自分の中に落とし込むまでに、すこし時間がかかりました。その状況にならないと分からない感情がたくさんあると思うので、監督と話し合いながらそこを埋めていく作業を行いました。人間らしさや愚かさという亜子の内面を出したいと監督に言っていただいたので、そこを大事にして役柄を掘り下げていきました」と演じるうえで大切にしていたことを教えてくれました。

行定監督は本作の設定について「表面の情報だけで捉えてしまいがち」と言及した上で「福原さんは真摯さ、ピュアさがあります。自分ではない人物の感情を想像した上で、福原さんの中で落とし込めるかどうかがすごく重要で、深く理解して演じてもらえたと思いました」と絶賛しました。続けて「普通だとあり得ないかもしれない涼と亜子の行動を観た方に理解してもらうことが重要でした」と考えを述べました。

そして、双子の兄・涼と弟・恵の二役を演じた福士さんに監督は「演じ分けないで」とリクエストしたそうで「(恵の)役をやっていることはやっているっていうことでいい。そこは福士くんに任せました。涼は、恵のフリをしているんだけど、恵になり切れていないという部分が露わになっているからこそ、(涼と恵)が2人いるような感じになるし、涼が恵を作り上げようとしている感じになっていると思います」と絶妙なバランスで双子を演じた福士さんへの演出意図を明かしました。また「2人で不在になった人をそこに成立させようとしている。福原さんと福士くんがちゃんとそれを理解した上で、それを目指して演じていました。だから、ずっと恵がいたということなんですよね。」と力をこめて話しました。

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福原さん「福士さんはすごく周りを見られる方。本当に引っ張ってもらいました!」

恋人を喪った亜子を演じてみて感じたことを聞くと、福原さんは「自分の大切な人がいなくなって、そこから立ち上がるには本当に時間がかかるし、すぐに前向きに進むのは難しい。今作ではそれがすごくリアルで、自分のペースで少しずつ前に進もうとして行く亜子と涼の姿にすごく勇気をもらいました。無理に立ち上がろうとするのではなく、自分と向き合いながら自分のペースでいいんだと思うことができました」と答えました。

福士さんとの共演については「とてもストイックで、周りをよく見られている方。現場の空気を明るくしてくださり、本当に引っ張ってもらいました」と福原さん。映画の中で、仲睦まじく過ごす涼と亜子の姿が微笑ましくもあり切なさも感じる今作。福士さんと福原さんとの身長の差が印象にあり、亜子が涼の頭に手をおいておまじないをかけるシーンの話を聞くと「ギリギリ(手が)届きました!」と笑いながら撮影を振り返ってくれた福原さん。お互いに“秘密”を抱え、真実が言えない2人の微妙な距離感を絶妙に演じている福士さんと福原さんにも注目です。

また、涼と恵の幼なじみである梶野役は宮沢氷魚さんが演じています。涼と恵がどんな兄弟だったのかを知る重要な役割を担っている人物です。福原さんと宮沢さんは大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の中での誰袖花魁と田沼意知役で共演が話題になったばかり。福原さんは映画と大河ドラマを同時期に撮影していたことを明かし「明日もありますね。忙しいですね」とお互いに労いながら撮影していたことを教えてくれました。

映画『楓』を締めくくるのはスピッツが歌う「楓」ですが、劇中ではロックバンドSUPER BEAVERの渋谷龍汰さんと、シンガーソングライターの十明(トアカ)さんが「楓」をカバーし、それぞれ重要なシーンで流れてきます。昔からSUPER BEAVERのファンだったと話す監督。「売れてないときからライブを見に行っていたんです。彼の声は独特な伸びやかさがある」と話す一方で、曲を掛けるタイミングについては苦戦したエピソードを語ってくれました。「当初、思っていたとこに(渋谷さんの「楓」を)あわせてみたら、思っていたよりも歌が強かったんです」と振り返り、Yaffleさんにアレンジを工夫してもらったり、アルベジオだけで構成してみたり、アコースティックでやってみるなどしつつ「亜子の心情にあわせて微妙なズラシで“ここだ!というところ(にいれました)。そこにしかハマらなかったです」と行定監督。十明さんについては「語るみたいに歌う人ですごく良いなと思った」と話し「役割としては過去に導入していくとか、心に残っていた歌を思い出させてくれるような歌」と2曲について感想を述べました。渋谷さんと十明さんの「楓」がどのシーンで聴こえてくるかは劇場で確認してくださいね!

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到着5分で撮影!福原さん「撮っておいて良かった!」ニュージーランドの星空保護区“テカポ湖”で奇跡のラストショット!

映画『楓』の冒頭とラストの舞台となったニュージーランドについて監督は「外国で撮影したくなくて(笑)。熊本とか長野でいいんじゃない?と言っていたんですが、プロデューサーに“行くんです!”って言われて」と正直に話し、続けて「(ニュージーランドに)行ったら、もう信じられないぐらいの星!」と興奮気味に話しました。また、5日間の撮影期間中、晴れている日が2日間ほどしかなく、天気を相手にした撮影に苦戦したことも教えてくれました。特に映画の最後のショットについて監督は「(福原さんが)到着して、ものの5分ぐらいで撮った。湖と山と光を待って、“今!用意スタート!”って。撮影が終わるころにはもう影ってしまっているんですよ」と臨場感あふれるエピソードを聞かせてくれました。

福原さんもこの急な撮影には驚いたそうで「その日は移動日だったので(笑)。ホテルに行くかと思ったら現場で衣装着て、“メークはいいから!”って(言われて)。(あの時)本当に撮っておいて良かったと思いました」と振り返りました。「よくやってくれたなって思います」という行定監督の賛辞に謙遜する福原さん。続けて、行定監督は通常の撮影では監督の急なリクエストにプロデューサーがNGを出すケースが多いそうですが「僕は諦めていたんです。でも、プロデューサー2人が“今日です!”って。プロデューサー側の意気込みに感動しました。プロデューサー側がそう思ってくれるっていうのは意味があるよね」と話す嬉しそうな表情が印象的でした。

一方、初めてのニューニュージーランドだったという福原さん。「私が行った時は曇っていて。星空ツアーにみんなで行こう!と言っていたんですけど、ちょっと天気が悪すぎて行けなかったんです」と残念そうに話しながらも、「テカポ湖の景色は本当に分単位で表情が変わる。それが本当に面白くて飽きないんです!」と美しさを伝えてくれ、撮影した写真について「全部が違う写真に見えるぐらい!色も何もかも全部が違っていて感動しました!」と福原さんも興奮気味でした。

最後に行定監督は「王道のラブストーリーになりましたが、今までになかったストーリーだと思います。“そんなわけないじゃん”というところを、“なるほど、そういうことだったのか”と、感動する物語になっているはずです。亜子の心情、そこに寄り添おうとした涼の気持ちは普遍的な感情で、決して暗いものではないと思います。スピッツの名曲がこんなにも幅広く長い時を経ても聴かれている秘密はそこにあったと思います」と話しました。

福原さんは「作品の中に相手を“おもんぱかる”という言葉が出てきますが、相手をおもんぱかるからこそ言えなかったり、すれ違ってしまったりという心優しい、奥ゆかしさが出ていて、本当に温かい作品だなと思いました。秘密が散りばめられていて最後まで“え、そうだったの?”という驚きもあって、1回だけじゃなくて2度3度と観れば観るほどいろいろな角度から楽しめる作品になっていると思います」と作品への思いを語りインタビューを結びました。行定監督と福原さんを魅了した星空とテカポ湖の美しい風景、キャスト・スタッフがチームワークで生み出した映画『楓』はぜひ大きなスクリーンでご覧ください。

作品概要

映画『楓』

12月19日(金)全国公開

出演:福士蒼汰 福原遥 宮沢氷魚 石井杏奈 宮近海斗 大塚寧々 加藤雅也

監督:行定勲

脚本:髙橋泉

原案・主題歌:スピッツ「楓」(Polydor Records)

音楽:Yaffle

製作:映画『楓』製作委員会

制作プロダクション:アスミック・エース C&Iエンタテインメント

配給:東映 アスミック・エース

Ⓒ2025 映画『楓』製作委員会

2025/日本/カラー/120分/シネスコ/Dolby5.1c

公式サイト: https://kaede-movie.asmik-ace.co.jp


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