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2025-09-29

名古屋発のアートハウスJホラー 映画『NEW RELIGION』世界が絶賛した規格外の作品が名古屋凱旋上映


10月3日(金)からミッドランドスクエアシネマで公開される映画『NEW RELIGION』は、娘を亡くし、現在はコールガールとして働く女・雅(瀬戸かほさん)と、《背骨》の写真を撮らせてほしいと望む奇妙な客・岡(岡諭史さん)との出会いから始まる現実の浸食、そして社会の崩壊を描く心理Jホラーです。メガホンをとったのは映画『NEW RELIGION』で長編映画デビューを果たした愛知県出身のKeishi Kondo監督です。本作はカンヌ国際映画祭「Marche du Film」に出展され、現在はアメリカ・イギリス・フランス・ポルトガル・ドイツなど世界中に配信中。大手批評メディアCOLLIDERに”過去5年間で最も怖いホラー映画”において第4位に選ばれるなど批評的にも成功を収めた作品です。いよいよ名古屋凱旋公開間近の映画『NEW RELIGION』の魅力をお伝えします。

浮遊感ただよう主人公を好演する瀬戸かほさんに注目 映画『NEW RELIGION』現代性を感じさせるJホラー

映画『NEW RELIGION』は、娘を不慮の事故で亡くしたことを理由に離婚し、現在はコールガールとして働く女性:雅が主人公の物語です。雅役は、現在シネマスコーレで上映されている映画『はらむひとびと』(9月20日~)や、『クレマチスの窓辺』(2021年)で主演している瀬戸かほさんで、雅のつかみどころのない浮遊感が漂うキャラクターを体現しています。娘を亡くして3年、今は恋人(西園寺流星群さん)と同棲中です。二人が暮らす部屋は白色が基調のナチュラルテイストの団地の一室…娘を亡くした部屋というところが何か意味深です。コールガールの待機部屋は無機質で薄暗く、電灯がチカチカ点滅することもある空間です。雅の同僚がある日、”いるはずのない父親”の話をした後に通り魔事件を起こし、そのあとも凶悪なテロ事件を起こします。雅は同僚:アカリ(水田黒恵さん)が最後に訪問した客・岡に指名され、出会うところから物語が動き始めます。

岡は性的な接触を求めず、体の各部位を毎回少しずつ写真に撮らせてほしいという風変わりな客です。岡が居る団地は没個性的ですが、部屋の奥に進むにつれて不穏な影が付きまといます。暗闇の中で音と映像を垂れ流すテレビ、蛾の写真が壁に掛けられた赤い部屋、カーテンで仕切られた空間など、全てに意味が張り付いているような異様な閉塞感があります。Jホラーというと”祟り・恨み”のような湿った感情や、”生贄・呪術”のような古代から続く儀式的なものが描かれるイメージですが、この映画『NEW RELIGION』では、雅や雅の同僚などの”生贄”の身体を写真撮影という”儀式”によって乗っ取り、岡の”世界崩壊という欲望”が結実していく模様が描かれる、ウエットというよりもドライ、因習よりも現代性を感じさせます。
しかし、形のない邪悪なものを「そばに息づくもの」として受け入れてしまう日本の精神的風土が、海外の目線でJホラー的なものを想起させるのかもしれません。海外で先に評価され、逆輸入された形の映画『NEW RELIGION』が日本でどのように受け取られるのか楽しみです。主人公の雅が岡に写真を撮られるたびに現実世界から離れて深層心理に迷い込む様子は、”写真が魂を封じ込める”という日本の迷信を具現化したように見える印象を残します。初対面のはずの岡と雅が「会ったことがある」という美しい海の情景は夢かうつつか。海の情景がどのような色彩なのか映画でご確認ください。

今池商店街、杁ケ池公園、地下鉄など名古屋で撮影 恐怖と不穏さが肌に触れてくるような映像と音響

監督をつとめたKeishi Kondoさん、撮影監督の三品鐘さんなど名古屋で活動するスタッフで作られた映画『NEW RELIGION』。名古屋・大須に拠点を置くKondo監督によると本作の9割は今池商店街、杁ケ池公園など名古屋で撮影したそうで、劇中には名古屋の地下鉄の駅構内、地上を走る地下鉄の姿が映し出されています。地元にいると「このシーンはどこで撮ったのだろう」という好奇心がむくむくと湧いてしまいます。また、雅が住む部屋であり娘の転落死を招いた一室、相手の無意識に入り込み、体を乗っ取る”儀式”めいた写真撮影の現場である岡の一室は外から見ると何の変哲もない団地の一室という点も妙にリアルで、日常に隠れる「魔」を表しているようです。映画『NEW RELIGION』は、ストーリーを追うタイプの作品でなく感じ取るタイプの作品のため、いわゆる説明的な描写がありません。自分の過失からわが子を亡くしてしまった女親の心の闇と、体の部位をポラロイドで撮らせていくうちに娘の霊の存在を感じるようになた無間地獄にいるような雅の心模様を映像を通して見つめることしかできません。雅が岡に撮影されるたびに骨格と人格、記憶の輪郭を無くし、その終着点が救いなのかどうかは鑑賞者の解釈に委ねられます。またすべての輪郭が消える臨界点で何が起こるのか…ホラーという括りを抜けて、新たな世界観へと広がる作品です。
劇中の、サナギの中で幼虫が蛾へと形態変化させる様子を述べる音声や、赤い照明の部屋に掛かる蛾の写真は「胡蝶の夢」やカフカの『変身』、映画『羊たちの沈黙』で描かれるような”変身・脱皮”を想起させるイメージに重なります。また江戸川乱歩、黒沢清監督、デヴィッド・リンチ監督の世界観の影響もそこはかとなく感じられます。Kondo監督が観てきた映画や影響を受けた映像作品も気になるところです。
映画『NEW RELIGION』は、映像美が一番の魅力といえますが、もう一つ、恐怖と不穏さが直接肌に触れてくるような重厚なサウンドも見逃せません。雅が岡の部屋の内部に進むにつれて大きく響く低音と要所要所に散りばめられたノイズは否が応でも、不快さや恐怖を呼び起こします。ベルギー在住のアンビエントアーティストAbul Mogardさんが楽曲提供し、日本からはZeze Wakamathuさん、松本昭彦さん、MIMMさんが作曲家としてバックアップし、映画全編を覆いつくす独自の境地を構築し、過去と今、現実と深層心理(妄想)という振り子のような揺らぎを不穏な音響でも迫ります。また謎の男:岡が話すとき、肉声ではなく機械で声を発している点も不自然さが際立ち、不思議な世界観が生まれています。圧倒的な映像美&美しく不穏な音響、不思議な物語をぜひミッドランドスクエアシネマでお楽しみください。

ミッドランドスクエアシネマで上映 10/3(金)~9(木)は連日舞台挨拶を開催

映画『NEW RELIGION』は 7月18日から新宿シネマート、9月13日から大阪のシアターセブンで公開され、ついに10月3日から名古屋のミッドランドスクエアシネマで上映されます。10月3日から9日までは連日の舞台挨拶が予定されています。Keishi Kondo監督、瀬戸かほさん、岡諭史さん、ナカムラルビイさん、HANAさん、脇田敏博さんなどのキャストが連日、登壇し、上映前や上映後に舞台挨拶を行います。ぜひ、この機会に名古屋で生まれた本作を名古屋の劇場でご覧ください。

愛知出身かつ名古屋で活躍するKeishi Kondo監督からの熱いメッセージ‼

《Keishi Kondo/監督・脚本・編集・プロデューサー》
「一緒に映画を作りませんか?」まだコロナ禍が日本を覆う前、2020年以前ー名古屋で映像制作していた私は、友人や日頃の仕事仲間に声をかけました。若手もベテランも関係なく、一人また一人と集まり、やがて小規模な自主映画の撮影は、商業映画に引けを取らない規模へと膨らんでいきました。その中心にあったのは名古屋のクリエイターたちの「映画を撮りたい」という純粋な創作への渇望でした。一人一人の情熱が場を生み、やがて映画という形を取り、世界に届いた作品となったのです。
東京と比較して名古屋には映画産業がありません。名古屋発で商業映画を作る機会も帆dとんどありません。けれど、私には夢があります。世界に通用する映画を生み出す、もう一つの映画産業を名古屋に作り出すこと。この『NEW RELIGION』は、そんな無謀とも思える夢への最初の小さな一歩です。愛知県のクリエーターたちの手によって生まれたこの”美しく呪われた”、奇妙なホラー映画をどうか劇場でご覧ください。

作品概要

10月3日(金)よりミッドランドスクエアシネマにて公開
出演:瀬戸かほ 岡諭史 西園寺流星群 沼波大樹 ナカムラルビイ 水田黒恵 永田祐己 HANA 脇田敏博 浅井信好 堀佑太朗
監督・脚本・編集・プロデューサー:KEISHI KONDO
音楽:ZEZE WAKAMATSU/ABUL MOGARD/松本昭彦/MIIMM
撮影:三品鐘
照明:長岡滋
録音:桐山元秀
助監督:松田暁峰
ラインプロデューサー:安達雄樹
整音:澤田弘基
VFX:守屋雄介
カラリスト:MITYA KUZNETSOV
メインビジュアル:石井勇一
制作・配給:SHM FILMS 海外配給:REEL SUSPECTS
カラー/DCP/シネマスコープ/100分

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