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2017-09-20

【9/23公開】映画『ユリゴコロ』の熊澤尚人監督インタビュー


9月23日に公開となる映画『ユリゴコロ』は沼田まほかるさんの同名小説を原作とした作品で、5年ぶりの映画主演作となる吉高由里子さんが殺人者を演じていることでも大きな話題となっています。メガホンをとった熊澤尚人監督が名古屋に来られた際に、インタビューさせていただくことができました。豪華なキャストのみなさんのお話や今作の制作にかけた想い、名古屋出身の監督ならではの名古屋にちなんだ撮影裏話などを聞いてきました。(取材日:2017年9月7日)

沼田まほかるさんの小説「ユリゴコロ」

2011年に発売された沼田まほかるさんの小説「ユリゴコロ」は第14回大藪春彦賞を受賞し、第9回本屋大賞にノミネートされたり、「このミステリーがすごい!」国内部門第5位になるなどしました。イヤミスブームの後押しもあったのか、多くのミステリファン、小説ファンの注目を集め、この作品をきっかけに“まほかるブーム”が起きました。「ユリゴコロ」は沼田まほかるさんの作品で初の映画化作品となりました。

婚約者が失踪したことで失意の中にいる亮介は実家で「ユリゴコロ」と書かれた一冊のノートを見つけます。そこにはある殺人者の記憶が綴られているのですが、事実なのか創作なのか、誰が何のために書いたものなのかわかりません。物語は亮介の現在パートとノートの中に綴られた過去パートが交錯しながら進んでいき、驚愕の真実に辿り着きます。

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映画化にあたっての困難とこだわり

熊澤尚人監督によると「ユリゴコロ」は映像化にあたり、かなりの争奪戦があり、いくつものチームが映像化を試みて頓挫していたそうなのです。小説「ユリゴコロ」には小説ならではの謎やトリックが入っていて、実写にした瞬間にトリックが成立しなくなるものもあったとか。熊澤監督は映画化するにあたって「次はどうなるんだろうとゾワゾワしてくる感覚を大切にしたいと思った。」と話しておられ、1級のミステリー感を映像でも感じてもらおうと、映画用にトリックを作り直したところもあり、脚本に3年くらいかけられたと教えてくれました。

吉高由里子さん演じる美紗子の魔性

熊澤監督は主演の吉高由里子さんのキャスティングについて「これまではキュートでファニーな役どころが多かったが、妖艶な美しさ、影があったり、冷たい氷のような、幸の薄い感じをやるのがうまい人だと思ってオファーをした」と話していました。実際の撮影で吉高さんは狙い以上の輝きを放っていたそうで「昭和の女優さんのような雰囲気も感じ、美紗子を演じている吉高さんを撮るのをゾクゾクしながら楽しんでいた」と撮影を振り返っていました。

確かに映画の中での吉高さん演じる美紗子の表情がなんとも言えず良くて、熊澤監督も「地獄をみた顔するんです」と話していた程、真顔やせつない顔、涙を流す表情も、殺人者という共感できる相手ではないのに、惹きつけられてしまいました。

一級の俳優陣によって描かれた人間の二面性

美紗子は人を殺さないと生きていられない人なのに、人を愛する気持ち、人を思いやる気持ちを知ってしまいます。熊沢監督は「『ユリゴコロ』は相反する真逆の気持ちを持っている人が葛藤をしながら生きていく物語。」と言っていました。二面性を持っているのは美紗子だけではなく、松山ケンイチさん演じる洋介や、松坂桃李さん演じる亮介も、他の登場人物も同じように二面性が描かれています。

吉高さん、松山さん、松坂さんの3人について熊澤監督は「3人とも一級の俳優陣なので、打てば響まくる人達」と話し、前の作品で増量していた松山さんが30キロ減量して元の体重に戻っていたところから、さらに10キロの減量を依頼したことや常に現場で様々な提案をしていた爽やかな松坂さんの様子などを教えてくれました。「監督は言うだけなので簡単だけど、やるのは大変だと思う。」と俳優たちを労い、「(亮介の葛藤は)桃李くんの腕の見せ所、松山くんは『怒り』よりも良い面が出ていると思う」と彼らの演技を絶賛していました。若手の枠をとうに超えている一級の俳優陣の力を存分に堪能できる作品になっているので『ユリゴコロ』はぜひ劇場で観てもらいたいです。

完成は8月末!?完成したばかりの『ユリゴコロ』

映画『ユリゴコロ』は過去パートと現在パートを2回にわけて撮影をしたそうなのですが、最終的に映画が完成したのは8月末ギリギリだったそうなのです。熊澤監督に理由を聞くと「編集の最後の最後まで、どういう見せ方をするのがいいのか、細かな調整をしていた」とのこと。『ユリゴコロ』は保護者の解説があれば12歳以上なら観ることができるPG12作品で、「表現としてはそんなに過激なことは写っていないけれど、リアルに感じられるように作っている」そうです。この辺りの調整にも時間をかけられたのかもしれません。

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名古屋出身の熊澤監督から名古屋にちなんだエピソード

名古屋出身の熊澤尚人監督に映画『ユリゴコロ』で名古屋に関連したものは?という質問に「ユリゴコロはものすごく名古屋です。」と応え、熊澤監督が名古屋出身ということに加え、突然失踪してしまう亮介の婚約者・千絵を演じた清野菜名さんは愛知県稲沢市出身、照明部や制作部にも名古屋出身のメンバーが多かったと教えてくれました。また、バーベキューのシーンの撮影前に、現場で熊澤監督が清野さんに名古屋弁で話しかけたところ、本番になっても清野さんの名古屋弁が抜けなくなったというエピソードも披露してくれました。

映画『ユリゴコロ』の見ゴコロ

松坂さん演じる亮介が実家の押入れで見つけたノートに書かれていることが一体何なのかという点は原作が持っている大きな魅力なので、映画も同様ではあるのですが、熊澤監督は「伏線も違うし、最後の結末も違っているので、小説を読んでから観ても映画はこうなるんだというサプライズもあるので楽しんでもらえると思う。」と話していました。

『ユリゴコロ』は撮影の準備段階の打ち合わせで、ビジュアル的なプランを綿密に行なっていたそうです。美しさの中に怪しさがある色のトーン、これまでの邦画では観たことのない雰囲気ながら日本っぽさもあり、美術セットや家具の色、壁紙ひとつまでこだわり、全体の撮影のトーンを考えて作られています。

予告編では吉高さん、松山さん、松坂さんが泣いているシーンが印象的なのですが、本編ではそれぞれが流している複雑な涙の意味を感じて欲しいです。セリフで説明されているわけではない部分も多いので、映画を観て感じたことや思ったことを家に持ち帰って、観た人と共有する楽しみもある作品です。

作品概要

映画『ユリゴコロ』

出演:吉高由里子、松坂桃李、松山ケンイチ、佐津川愛美、清野菜名、清原果耶、木村多江

原作:沼田まほかる『ユリゴコロ』(双葉文庫)

監督・脚本:熊澤尚人 

企画・製作幹事:日活

制作プロダクション:ジャンゴフィルム

製作:「ユリゴコロ」製作委員会 

配給:東映/日活

PG12

http://yurigokoro-movie.jp/

©沼田まほかる/双葉社 ©2017 「ユリゴコロ」製作委員会

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