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2022-02-15

「‟変な声”は怒られました」映画『ちょっと思い出しただけ』松居大悟監督と池松壮亮さんにインタビュー


 

2月11日より公開の映画『ちょっと思い出しただけ』は松居大悟監督による初の完全オリジナルラブストーリーで、池松壮亮さんと伊藤沙莉さんがダブル主演をつとめています。池松さん演じる怪我でダンサーの道を諦めステージの”照明さん”として働く照生と伊藤さん演じるタクシードライバーの葉の2人の‟年に一度訪れるある1日”が現代から6年間にわたって遡って描かれています。

公開を前に松居監督が名古屋でインタビューに応じ、池松さんも東京からオンラインで参加してくれました。松居監督は本作のきっかけとなったクリープハイプの「ナイトオンザプラネット」やオリジナル作品で初めてのラブストーリーに挑戦した気持ち、当初は別のタイトルを考えていたことも話し、池松さんは伊藤さんとの共演シーンについて初めてのエピソードを語ってくれました。(取材日:2022年2月3日)

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初のラブストーリーに「尖ったことをやってきた仲間と‟ど真ん中”」

映画『ちょっと思い出しただけ』は池松壮亮さん演じるダンサーの照生と、伊藤沙莉さん演じるタクシードライバーの葉、今は別々の生活をしているふたりが過ごした6年間のある1日を現代から遡って描いています。スクリーンに映し出される何気ない日々や様々な出来事、すべてが愛おしく感じられる作品で、過去の恋愛を否定も肯定もせず、自身の記憶も呼び起こされたりするのですが、そんな自分に対しても『ちょっと思い出しただけ』とつぶやきたくなる良作です。

松居大悟監督は本作のきっかけが親交のあるクリープハイプの尾崎世界観さんから「2年前の春、一番最初の緊急事態宣言が出た頃に送られてきた曲」であると話し「ミュージックビデオをとってほしいニュアンスだったけれど、長編映画で応えたい、責任を取りたいと思いました」と話しました。クリープハイプの「ナイトオンザプラネット」はジム・ジャームッシュ監督の名作『ナイト・オン・ザ・プラネット』に着想を得て尾崎さんが書き上げた曲で、松居監督は「尾崎君がバンドをやろうと思ったきっかけとなった映画で、そんな彼らが事務所がつぶれそうな時に、覚悟を持って作った優しいメロディ」と振り返り「歌詞を分解してストーリー化するわけではなくて、この曲が最後に流れるラブストーリーを作ろうと思って台本を考えていきました」と教えてくれました。

初のラブストーリーであることについて松居監督は「いわゆる恋愛ものに対しての恥ずかしさや照れ隠しがあって、ずっと避けてきたんです」と打ち明け「ちゃんと‟ど真ん中”(ラブストーリー)をやるときには、今まで尖ったことをやってきたメンバーとやりたかったんです」と尾崎さんや池松さん、カメラマンの塩谷大樹さんなど、たくさんの作品を共に作ってきた仲間の存在を挙げました。また『ちょっと思い出しただけ』というタイトルに関して、松居監督は当初『星につま先』というタイトルを考えていたと話し「すごくいいタイトルだと思っていたのに、みんなから‟わかりにくい”って言われて、クランクイン直前にこれになりました。今は『ちょっと思い出しただけ』が良かったと思っています」と「ナイトオンザプラネット」の歌詞の中のフレーズがタイトルになっていることに納得している様子でした。

池松壮亮さんが伊藤沙莉さんから怒られた‟変な声”の名シーン

映画『ちょっと思い出しただけ』は池松さんと伊藤さんによる会話劇がお芝居であることを忘れてしまうほど自然で、目の前で繰り広げられる照夫と葉の過ごした日々を愛おしく感じられる作品です。池松さんに撮影の様子を聞くと「アドリブという言葉はあまり(役者だけの手柄のようで)好きではない」と言及し「人と人がカメラの前に立った時に起こるものを欲してくれて、その場で起こること、リアクションとリアクションの先にあるト書きにないもの、2人の世界の中で生まれる言語や会話を選んでいって、それを掬いとってくれたなと思います」と松居監督の演出は撮影に入る前から始まっていると話しました。松居監督は「セリフ的には結構台本通りにやっていて、リアクションや隙間をみんなが埋めてくれました」と話し「決定稿になる前に伊藤さんとも話したし、池松くんとはみっちり話したし、尾崎くんやプロデューサーやいろいろな人とやりとりをして、全員が役にも、台本にも向かっていく、自分たちのものに近づけていく作業は丁寧にした気がします」と教えてくれました。

松居監督は「物語としてラブストーリーではあるんですがピークで終わらないようにすることを大事に思っていました」「ドラマチックなシーンの後、日常に戻っていく過程も含めて大切に丁寧に撮ろうと思っていました」と話しました。池松さん演じる照夫のキャラクターや声、話し方を魅力的に感じたことを伝え、キャラクター作りで意識したことを聞くと「実は父親と弟と僕の話し方がまるで一緒なんですよ。だから多分、血です。親に感謝します。」と冗談を口にしながら「目の前の出来事の処理能力は高いけど、全部持ち帰ってしまうような柔らかさと不器用さを持っていたらいいなと思っていたのは確かです」と教えてくれました。

池松さんは自身の声にコンプレックスがあることも話し「松居さんは伊藤さんの声がすごく好き」と言い、伊藤さんとの共演シーンについて「タクシーの中で私のどこが好きなのと聞かれるシーンで声を褒めてって言われて、その‟変な声”も好きだしって言ったら伊藤さんから『変って何?』って怒られました(笑)」と初めてのエピソードを披露してくれました。

作品概要

映画『ちょっと思い出しただけ』

2022年2月11日(金・祝)よりミッドランドスクエアシネマほか全国公開

監督・脚本:松居大悟

出演:池松壮亮、伊藤沙莉、河合優実、尾崎世界観、國村隼、永瀬正敏

主題歌:クリープハイプ「ナイトオンザプラネット」

配給:東京テアトル

<『ちょっと思い出しただけ』あらすじ>

怪我でダンサーの道を諦めた照生とタクシードライバーの彼女・葉。めまぐるしく変わっていく東京の中心で流れる、何気ない一日。特別な日だったり、そうではなかったり・・・でも決して同じ日は来ない。二度と戻れない愛しい日々を、“ちょっと思い出しただけ”。

©2022『ちょっと思いだしただけ』製作委員会

 


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