「安楽死法案」が可決された近未来の日本が舞台の映画『安楽死特区』主演の毎熊克哉さん、大西礼芳さん、原作&製作総指揮の長尾和宏医師に名古屋でインタビュー
2026年1月23日より全国公開される映画『安楽死特区』は、「安楽死法案」が可決された近未来の日本が舞台で、国家主導で導入された制度の下で安楽死に向き合う登場人物たちの心模様が描かれる、生と死、人間の尊厳、そして愛を問う衝撃の社会派ドラマです。監督は『痛くない死に方』(2021年公開)、『夜明けまでバス停で』(2022年公開)、『「桐島です」』(2025年公開)などの高橋伴明。本作を通して、観る者一人一人に静かで重い問いを投げかけます。回復の見込みのない難病を患った章太郎を毎熊克哉さん、彼のパートナーの歩を大西礼芳(あやか)さんが演じ、安楽死特区の医師団に加藤雅也さん、板谷由夏さん、下元史朗さん、奥田瑛二さん。その他、余貴美子さん、平田満さん、筒井真理子さん、友近さん、鈴木砂羽さん、など個性豊かな方々が出演しています。

映画『安楽死特区』公開前に主演の毎熊克哉さんと、大西礼芳さん、医師で原作者であり、本作の製作総指揮の長尾和宏さんが名古屋でインタビューに応じてくれました。毎熊さんがラップに初挑戦したことや印象深いシーン、先輩俳優陣さんとのやり取り、毎熊さんと大西さんの2人が感じた撮影時のエピソードや高橋伴明監督について話しました。(取材日:2025年12月19日)
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毎熊克哉さんがラップに挑戦「決して簡単ではありませんでした」
映画『安楽死特区』の舞台は安楽死法案が可決された近未来の日本。主人公は、回復の見込みのない難病を患い、余命半年と宣告されたラッパー・酒匂章太郎(毎熊克哉さん)と、彼のパートナーでジャーナリストの藤岡歩(大西礼芳さん)のカップルです。安楽死法に反対している二人は、特区の実態を内側から告発することを目的に、国家戦略特区の施設「ヒトリシズカ」に入居しますが、そこで見聞きしたこと、医師たちとの対話を通じて、互いの心に微細な変化が生まれてきて…という社会派ヒューマンドラマです。
在宅医として2500人以上を看取ってきた医師で作家の長尾和宏さんによる同名小説を、丸山昇一さんが高橋伴明監督と初タッグで脚色。安楽死という大きなテーマに対抗するには、自分の言葉を持った人物でなければ説得力がないと考え、章太郎を原作とは異なる「ラッパー」という設定にしたそうです。
本作『安楽死特区』で初めて挑戦したラップについて毎熊さんは「決して簡単ではありませんでしたね」と苦笑。「ラップは音楽や踊りのように”何か”を体を使って表現する感覚的なものだと思います。だからラップも気持ちの表現のようにナチュラルに見えたらいいなと思っていました」と述べました。加えて「ラップはリズムの中に嵌めるという決まりがあるので、そこは練習して頑張って、全体的に言葉の中身も大事にしましたね」と感情面とリズム、言葉の多方面からのアプローチで演じたと話しました。パートナーとの会話内に挟まれるラップ、「ヒトリシズカ」の医師たちと向き合う際の心迫るラップなど毎熊さん渾身のラップにご期待ください。
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毎熊克哉さんと大西礼芳さんは眼差しが似ている「目を見て、涙が止まらなかったシーン」を語りながら涙ぐむ
『安楽死特区』の脚本を読んだ第一印象を伺うと、毎熊さんは「奥深い台本で、真髄のようなものは一度では掴めませんでした。なのである意味、準備のし甲斐がありました」と言葉を選びながら述べました。大西さんは、作品に出会うまで「安楽死」について海外では許されていることは知っていたものの、身近で向き合うことが無かったと振り返り、「ジャーナリストとして安楽死に強く反対する役だったのですが、『本当に反対と断言して良いのだろうか…』という葛藤を持ちつつ彼女を演じていました」と悩みながら進めてきたと語りました。難しいテーマだからこそ「台詞をお互いに口に出していく中で、役を深めていった」と二人でうなずき合う毎熊さんと大西さんの姿からは、同士のような信頼感が滲んでいるように感じられました。
大西さんが映画『安楽死特区』の撮影で印象に残っていることとして「毎熊さんの目を見て、涙が止まらなかったシーンがありました」と話すと毎熊さんは「撮影中に?」と意外そうに問いかけました。大西さんが余貴美子さんとの3人のシーンと説明をすると毎熊さんは「あぁ~!」と反応。大西さんは「すごく優しい目をしていて・・・」と当時を思い出して涙ぐみました。
毎熊さんと大西さんは実際にお会いしても、劇中の姿も眼差しが似ているように感じられます。お二人にその旨を話すと、毎熊さんは「映画『初級演技レッスン』(2025年公開)の時に”目が似ているからドキドキした”っていう感想を頂いたことがあります」と明かしました。映画『初級演技レッスン』で初共演。2024年に両作品を数か月しか間を置かず撮影しタッグ2回目、前作は元恋人役、本作は現パートナー役ということもあり、両作品に通底するカップル感には説得力があります。
ベテラン俳優&スタッフに囲まれる現場は「役者として幸せだけど、怖い」緊迫した撮影環境を語る
作中で特にチャレンジだったシーンを尋ねると、毎熊さんは「映画の中でも大事なシーンとも言える、医師たちと主人公2人が対峙して議論する場面はすごく難しかったです」と話しました。詳しく伺うと、毎熊さんは「台本10ページ弱の長いシーンでした。主人公の病状的にも話すのもキツいはずなのに、結構台詞が多く、そのうちラップになっていくと台本にあって、目の前でベテランの俳優さんたち(奥田瑛二さんや加藤雅也さんなど)が医師団として黙って見ているんです。しかも周りにはベテランのスタッフさんたちもいっぱいいて・・・、”このシーンはどうなるんだろう”という想いが頭の中を巡る感じでした。更に、伴明監督は基本、撮り直しをせず一回で撮る方なので…」と緊迫した撮影環境だったと教えてくれました。
毎熊さんはそれらのシーンについて「役だけに集中していたんですけど、パートナーである歩の想いと、医師団が向けてくる言葉と、章太郎自身の気持ちの揺れなど、ふとした瞬間の気持ちの持っていきかたの表現が自分的には難しかったです。章太郎と歩は”にこいち”であるはずなのにちょっとだけ違和感を感じる時があるとか、曖昧な感じとか微妙な心のズレを自分が台本から感じたように演じた」と話しました。「まだ30代の僕たちが、これまでたくさんのことをされてきた先輩方と一緒にできるのは役者として幸せなことだと思います。でも、まぁ怖い」と、本音をこぼし、そのシーンの撮影前日は「無です!」と考えすぎないようにしていたと笑いました。大西さんもそんな毎熊さんに、大きく頷きました。
大西さんにも大変だったシーンについて質問すると「最後のシーンです。感情が出すぎてもダメになると思いましたし、歩がどの瞬間に、あのような決断をしたのかがあやふやだと物語の区切りとしておさまらないと、現場に立って強く思ったので、そこが一番大変でした」とクライマックスシーンを挙げました。美しくも静かな激しさを持つそのシーンは…劇場でご確認ください。
毎熊さんと大西さんのお話から高橋伴明監督は演技指導をするのでなく、俳優側に委ねて撮影に臨んでいるように感じます。伴明監督の現場について大西さんは「演出は特になく、”何ができる?”という感じで常に期待して待ってくれているのを感じます」と言い、毎熊さんも「うん」と同意。大西さんは「何度か伴明監督とご一緒してきたので、この作品では特に今までよりも強い気持ちを持って、自分で考えて思い通りに動いてみました。伴明監督の現場では羽を貰っていると感じています」と嬉しそうに話しました。毎熊さんは「伴明監督は言葉数が多くないんですが、演者のことをすごく見ています。僕がある場面を演じてみて一言呟いたことを聞いていて『そうだよな』って背中を押す感じなんです」と述べました。
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原作者の長尾和宏医師 伴明監督を「好奇心旺盛で、予定調和が大嫌い」と評し、エンドロールのある仕掛けも・・・
現場での先輩俳優との関わり方について尋ねると、大西さんは「加藤(雅也)さんは、よくお芝居の話など話してくれました」と言い、毎熊さんも「加藤さんは作品以外のお話も含めて、たくさんお喋りされてましたね。奥田(瑛二)さんもお話好きでしたね」と笑顔を見せました。平田満さんとは、互いに余命幾ばくも無い病状の設定だったので肉体的なアプローチ(減量)についてすこし話したと毎熊さんは語り、「平田さんと僕は、黙って本番を待っているタイプです。僕は待つというより、皆さんの準備が整うのを見ている感じですね」と述べました。現場での居かたは俳優それぞれなのですね。
インタビューに同席していた原作者で製作総指揮の長尾和宏さんは「僕もずっと現場に一緒にいたので、その通りでした」と振り返り、完成した作品について「すごい作品だなと素直に思います」と感慨深げに話しました。そして、本作のポスターを指さしながら「ネタバレになるから言えないけれど最後のシーン…彼女の目が語っているんですよ、フィクションとしての結末を。大西さんの目が半開きなのは、僕が数ある(カットの)中から選びました」と明かしました。加えて、エンドロール後に仕掛けがあると述べ、「プロデューサー陣の中でも”あり得ない”という人もいて、議論になりました。でも僕はあの映像をつけ加えて欲しいと言いました」とアッと驚く仕掛けについて含みを持たせました。
長尾さんは盟友である伴明監督について「彼は好奇心旺盛な人なんです。新しいモノ好きって言ったら怒られるかもしれないけど」と評すと、大西さんは「そうかもしれない」と二コリ。長尾さんは「予定調和が大嫌い。伴明ファンの方は”こう来るか”と思うのではないでしょうか。ピンク映画から安楽死まで…振り幅の大きい監督だと思います」と結びました。映画『安楽死特区』 魅力的なキャスト、ストーリー展開、アッと驚く仕掛けなど見どころたっぷりの映画です。ぜひ劇場でご鑑賞ください。また、原作小説『安楽死特区』(2019年刊行:ブックマン社)は映画と違った人物が登場し、エンディングも違い、映画とは違った味わい方ができますよ。
作品概要
2026年1月23日(金)ミッドランドスクエア シネマ ほか全国ロードショー
出演:毎熊克哉、大西礼芳、平田満、余貴美子、奥田瑛二 他
監督:高橋伴明
原作:⻑尾和宏 小説「安楽死特区」ブックマン社刊
脚本:丸山昇一
製作総指揮:⻑尾和宏
制作協力:ブロウアップ
配給:渋谷プロダクション
主題歌:「Oh JOE GIWA」作詞:丸山昇一、gb 作曲編曲 林祐介
製作:「安楽死特区」製作委員会(北の丸プロダクション、渋谷プロダクション)
(C)「安楽死特区」製作委員会