タモツのメガネは4種類 宮沢氷魚さんと岸井ゆきのさん初共演 映画『佐藤さんと佐藤さん』愛知出身の天野千尋監督に名古屋でインタビュー
11月28日(金)公開の映画『佐藤さんと佐藤さん』は、恋愛のその先で結婚をして家族になるという選択をしたサチとタモツの15年間を描き出した、2人で生きる喜び・楽しさ・悲しさ・切なさ…など様々な想いが詰め込まれた、ヒリヒリするほどリアルで、誰かと生きることにまっすぐに向き合ったマリッジストーリーです。本作でW主演するのは映画『ケイコ 目を澄ませて』(2022年公開)で数々の映画賞を受賞し、観るものの記憶に深く刻み込まれた岸井ゆきのさんと、映画『エゴイスト』(2023年公開)で繊細で深みのある演技を見せ、高い評価を得た宮沢氷魚さんです。本作でついに初共演を果たした2人が、15年という時間の流れをナチュラルに濃密に表現しています。共演は藤原さくらさん・三浦獠太さん・佐々木希さん・中島歩さん・ベンガルさんなど魅力的なキャスト陣が集結し、多様な人間模様を織りなします。

監督は、迷惑な騒音おばさんに悩まされる主人公の物語かと思いきや、想像を遥かに超えてくる登場人物の背景や物語の展開に度肝を抜かれる映画『ミセス・ノイズィ』(2020年公開)で鋭い人間観察眼を感じさせた天野千尋監督です。『話す犬を、放す』(2017年公開)の監督・脚本をつとめた熊谷まどかさんと共同で脚本を執筆し、オリジナルストーリーを紡ぎました。名古屋での特別先行上映会前に、天野千尋監督が名古屋でインタビューに応じてくれました。作品への想い、劇中の衣装やグッズについてのあれこれ、夫婦とは何かなどについて話しました。(取材日:2025年11月5日)
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共同脚本の熊谷まどかさんとの“パートナーとの愚痴の言い合い”がきっかけ
映画『佐藤さんと佐藤さん』はダンス好きでアウトドア派なサチ(岸井ゆきのさん)と、真面目で誠実でインドア派のタモツという正反対の性格のふたりが、大学時代に出会い恋人同士から結婚して親になって…という15年間が描かれたヒューマンドラマです。サチ・タモツの二人や彼らを取り巻く人々の気持ちが丁寧に紡がれており、共感ポイントが作品のあちらこちらにあるので”自分事”として改めてパートナーとの関係を見つめたくなる作品です。
オリジナルストーリーをどのように執筆していったのか聞くと天野千尋監督は「(共同脚本の)熊谷まどかさんとは友達で、”うちの喧嘩はね~”などお互いにパートナーとの愚痴を言い合うような関係です」と話し始めました。天野監督は10年前に結婚・出産し、子供の保育園を探してもフリーランスで仕事を中断していたため入れなかったそうで「夫の稼ぎに頼って家事育児をワンオペで担うことになりました。社会に取り残されたような気持ちになって、外で自由に働く夫が羨ましく、ストレスをぶつけてしまっていたんです」と劇中のタモツのような気持ちになったと明かしました。
天野監督は続けて「でも数年後、仕事に復帰すると、今度は撮影時などは数週間にわたって夫に家事育児を任せて外で働くサチのような立場も経験しました。仕事から帰ってくると、夫がかつての私のように恨めしそうな目で見ていることに気づきました」と夫婦で両方の立場を経験したと述べ、「社会的立場が違うために、視界がズレて、すれ違っていく夫婦を描こうという構想がベースにできました。それを元に熊谷さんとお互いの家庭の話をしながら、ひとつひとつシーンを作って行きました」と、まるで世間話をするかのような雰囲気だったと振り返りました。パートナーに不満があるとき、自分ならどのように言い返すかなど、細かい駆け引きにこだわって作ったとのことですので、劇中のサチ・タモツの深層心理を考察していくのも楽しそうです。
タモツ役の宮沢氷魚さんの眼鏡に注目!年代による変化、イメージカラーにも注目!
映画『佐藤さんと佐藤さん』は二人が出会った22歳からの15年が描かれています。大学の「珈琲研究会」で知り合った二人がひょんなことから交際へと発展。二人はまさに大学生…という“社会の空気”に染まっていないフワっとした印象です。サチはダンスサークルの黄色のパーカーを着て溌剌としたイメージ、タモツはブルー系の服で誠実なイメージと、天野監督はキャラクターの印象を色彩でも表現したと話していたので、衣装や小物にも注目してみてください。大学卒業後のシーンでは、塾講師をしながら弁護士を目指して独学するタモツと、会社員として働くサチが同棲しています。2人が暮らす部屋はブルーの壁紙で、一般的な壁紙のイメージよりもポップかつ、タモツのイメージカラーでもあり2人の住まいらしさを感じさせます。
司法試験の勉強をするタモツに寄り添うために、サチ自身も勉強して司法試験に挑み、30歳の時になんとサチが一人だけ合格。2人の間に微妙な空気が流れます。サチの妊娠も重なり、”子供ができて嬉しい”というタモツと、”結婚しても別に何も変わるわけでない”というサチは「結婚しても、離婚しても佐藤さん」の夫婦になります。産後すぐに町の弁護士事務所で忙しく働くようになるサチと、ワンオペで家事・育児を担いつつ司法試験の勉強を続けるタモツ…それぞれに忙しく生活に追われる2人の関係性や、タモツの醸し出す雰囲気が変わっていく様子を見るとヒリヒリします。
宮沢さん演じるタモツの年齢による雰囲気の変化について天野監督に尋ねると、「年齢の印象に、眼鏡は大きく影響すると思います。それで衣装合わせの時に宮沢さんご自身とスタッフ皆で、ズラーっと並んだ眼鏡の中からどれがいいか相談し、実際に試着してもらいながら選んでいきました」と教えてくれました。演技や佇まいだけでなく眼鏡でも年齢を演出していて、タモツのメガネは4種類、年代によって変わっていくそうなので注目です。
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「サチってこんなに力強かったのか」「クールなのに空回りして情けないタモツ」岸井ゆきのさん・宮沢氷魚さんコンビを絶賛
天野監督にサチを岸井さんに決めた理由を聞くと「サチはバイタリティがあって芯の強いイメージだったので、岸井さんにピッタリだなとオファーしました。実際に演じてもらったら、岸井さんのお芝居は本当に強度があって、サチってこんなに力強かったのか…と私自身が改めて知らされるような感覚でした」と絶賛しました。加えて「笑顔がチャーミングで愛嬌があり、サチの突っ走ってしまうところや、ちょっとデリカシーに欠けるところも、不思議と許せてしまうキャラクターになったなと思います」と話しました。
宮沢さんをタモツに起用した理由について天野監督は「クールでスタイリッシュな印象の宮沢さんが、空回りして情けない役を演じたら面白いのでは…と目論みました。これまでのスマートなイメージとは違う宮沢さんを見たかったんです」とニヤリとしました。そして「誠実な宮沢さんが役立たずで空回りしてしまう感じが面白くて愛おしく、そこに岸井さんの小さな体で全身でぶつかってく感じ…2人だからこそできたと思います」と2人の相性の良さに太鼓判を押しました。また、その空気ができたのは撮影前に1週間ほどリハーサルの時間を取れたことが大きいと明かし、環境作りを大切にしたと話しました。
主人公の目指す職業をなぜ“弁護士”にしたのか聞くと天野監督は「社会的な立場がズレたことで2人がすれ違っていく物語です。合格すれば社会的地位が高くてアイデンティティをしっかり確立できそうな職業だが、合格でするまでが大変な弁護士…この映画の題材にピッタリだなと思いました」と答え、「私自身が法学部出身で、周りの友達や親族に弁護士を目指す人がいたので、試験の大変さが身近にあったからこそ自然に浮かんできた題材でした」と加えました。サチが自転車で町を走り回るような弁護士として登場するのは「リーガルドラマで描かれるような大きな訴訟ではなく、町の中で小さな事件を扱って社会を支えている弁護士が私の身近に多かったので」とリアルな描写を心がけたことが伺い知れました。
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様々な夫婦が登場「結婚や夫婦、パートナーの形が変化している過渡期」結婚と苗字について考えるきっかけにも
苗字がタイトルに入っている意図について、天野監督は「外国に比べて日本は苗字で呼び合う事が多く、苗字がアイデンティティ的になっている人が多くいると思います。一方で、結婚によって簡単にそのアイデンティティが失われてしまう状況もあります。タイトルに苗字を入れることで、苗字が変わることの意味に意識を向けてもらいたかったですね」と述べました。天野監督自身も「天野」という苗字がアイデンティティになっていると語り、「サチは佐藤サチのままなんです。結婚で苗字が変わった後輩は苗字が変わってアイデンティティが揺らぐ経験をして、サチに釘を刺すシーンがあるんですが…サチには伝わらないんですよね」とサチと後輩(藤原さくらさん)との対比について言及しました。主人公夫婦の姓を「佐藤」にした理由は「普遍的な夫婦の話を描きたかったので日本で一番多い苗字を並べてみました」と微笑みました。
劇中、赤ちゃんや小さな子供たちが複数登場するので、撮影現場でどんな工夫があったのか聞くと、天野監督は「みんな泣いてほしいシーンで泣いてくれたり、ご機嫌でいて欲しいときにご機嫌だったり、子供たちに助けられました」と話し「主演のお二人が(子供の扱いが)上手くて、宮沢さんがおんぶして歩いているシーンは居心地がよかったのか赤ちゃんが寝てしまったり」と教えてくれました。
劇中にはサチ・タモツの両親や、弟夫婦、先輩や後輩夫婦、離婚経験者、弁護の依頼人夫婦など様々な夫婦が登場します。劇中で登場する、佐々木希さん演じる離婚して帰郷してきた女性について天野監督は「一見、傷ついたタモツを慰めてくれるファムファタール的な存在のように思われますが、その対極にある凛としたて自分の人生を強く生きるイメージのキャラクターです。そんなキャラとタモツを交わらせたかった」と登場意図を話しました。加えて天野監督は「現代は、結婚や夫婦についての価値観や、パートナーの形が変化している過渡期だと思います。ベンガルさん扮する古い価値観を持つ男性や、山本浩司さん演じる国際結婚をしている夫婦など…いろんな夫婦がいる今の社会の状況をそのまま映画の中に映したかった」と述べました。サチ・タモツ夫婦だけでなく、それぞれの登場人物が見せる言動に「あるある!」「えーー」など共感ポイントが満載で、結婚について、苗字について、立ち止まって考えたくなる作品です。
作品概要
2025年11月28日(金)全国ロードショー
監督:天野千尋
脚本:熊谷まどか、天野千尋
出演:岸井ゆきの、宮沢氷魚、藤原さくら、三浦獠太、田村健太郎、前原滉、山本浩司、八木亜希子、中島歩、佐々木希、田島令子、ベンガル
配給:ポニーキャニオン
©2025「佐藤さんと佐藤さん」製作委員会
映画公式HP︓https://www.sato-sato.com/