2020-07-13

「中村文則をその気にさせたのは日南響子」映画『銃2020』武正晴監督が名古屋舞台挨拶に登壇

 

7月10日から全国で公開中の映画『銃2020』は2018年に公開された村上虹郎さん主演の映画『銃』の続編やパート2などではないのですが、前作で「トースト女」を演じた日南響子さんが主人公の東子を演じている作品です。今作の脚本をつとめたのは、前作の原作小説「銃」の作者である中村文則さんです。重苦しい背景があり、閉じこもりがちな東子が拳銃を拾い、銃に繋がる人物と関わっていくことで、事件に巻き込まれ、意外なラストをむかえる物語です。

前作に引き続き、監督をつとめた武正晴監督が名古屋での上映後舞台挨拶に登壇し、観客からの質問に答え、舞台挨拶後にインタビューに応じてくれました。今作の企画の成り立ちやキャスティグ、作家が作る世界観へのアプローチの難しさや面白さについて語りました。武監督、中村さん、日南さん、3人の愛知県出身者が集結して完成した映画『銃2020』の魅力をご紹介します。(取材日:2020年7月11日)

親子共演決定の裏話も!村上虹郎さん主演の映画『銃』日南響子さん、武正晴監督、奥山和由プロデューサーに名古屋でインタビュー

映画『きばいやんせ!私』武正晴監督、坂田聡さん、眼鏡太郎さん登壇の名古屋舞台挨拶レポート&インタビュー

映画『嘘八百』武正晴監督に名古屋でインタビュー 千利休の幻の茶器で一攫千金!?

「中村(文則)さんをその気にさせたのが日南響子という女優だったんです」

映画『銃2020』の主人公は電気の止められたゴミだらけの安アパートにひとりで暮らし、夜の街角で男性を誘い、前払い金をくすねるような女性です。2018年公開の映画『銃』で「トースト女」というミステリアスな女性を演じていた日南響子さんが幼少期からのトラウマに悩まされ、心身ともにギリギリの状態で暮らしている東子に扮し、彼女が銃を拾ったことで物語は始まります。

公開2日目に名古屋市中区の伏見ミリオン座での上映後に舞台挨拶が行われ、前作に引き続きメガホンをとった武正晴監督が登壇しました。伏見ミリオン座では5月22日の営業再開後、初めてとなる舞台挨拶で、ソーシャルディスタンスを保つ形で着席した約60名の観客の前に登壇した武監督は写真撮影以外はマスクをつけたままでしたが、東京での舞台挨拶は中止になってしまったそうで、「これだけの人が映画館にいるのを久しぶりに見ました」と1月以来だという舞台挨拶に感慨深げな様子でした。

武監督は「前作の完成後に中村さんが『トースト女をやっていた人が凄くよかった』と言っていて、あの人が銃を拾ったらどうなるんですかねという話になって、その場で中村さんが『何か書いてみましょうか』と言ったんです。中村さんをその気にさせたのが日南響子という女優だったんです」と今作の誕生のきっかけを話しました。

前作の『銃』の原作は中村さんのデビュー小説ですが、今作は中村さんが映画用にオリジナル原案を書き上げたもので、武監督と共に脚本も担当されました。映画『銃2020』には日南さんの他にも『銃』に出演していた村上虹郎さんやリリー・フランキーさんなどが出演しています。武監督は『銃』と『銃2020』の関係性について「表と裏の世界で、同じ場所で撮影もしていて、前作を観ている方はわかるかもしれないけど、2本立てで観てほしいですね」と話し「前作に出ていた人たちを印象的に使ったら面白いなと思いました」と語りました。前作と同じ刑事役で出演しているリリーさんは当初出演の予定はなかったそうです。武監督は「リリーさんは撮影現場に差し入れを持ってきてくれたところを急遽、出演してもらったんです。全部で3カットだけなんですけど、すごく印象に残るんですよね」と振り返りました。

「日南さんにとっては幸せな現場だったんじゃないかな」

映画『銃2020』には主演の日南さんの共演者として佐藤浩市さん、加藤雅也さん、吹越満さんなどの名優がこぞって出演しています。舞台挨拶後のインタビューで武監督は「主人公がブレずにいれば、周りが自分を追い込んでくれて、(日南さんが)それに反応していくというキャスティングでした。日南さんにとっては幸せな現場だったんじゃないかな」と話しました。佐藤さんは東子が出会う謎めいた男、加藤さんは不審な中年ストーカー、吹越さんは裏のありそうな刑事を演じています。それぞれに狂気に満ちた役を演じている名優たちの様子について「みんな楽しそうにやっていましたよ」と振り返り、ポスターを指さして「みんないい顔つきしてますよね」と作品への自信をのぞかせました。

3人の男性登場人物の中でも特に奇妙なキャラクターであるストーカーの役割について武監督は「始めは理解できなくて、なくていいんじゃないかと思っていたんです」と話し「何度も何度も読み解いていくうちに、中村さんの意図がわかって、中村文学ってすごいなと思いました」と改めて中村さんの作品への敬意を表しました。今作でストーカーの果たしている役割については、ぜひ映画を観て感じ取ってみてください。男性と女性でかなり感想が異なるかもしれません。

東子は母親から「女はこうあるべきだ」と罵声を浴びせられたり、女であることを否定されるなどします。友近さんは狂気的な母親の役を熱演していて、武監督は「ずっとファンで、ネタを観ていたんですよ」とライブに通っていたことも明かし「素晴らしい女優さんで、ものすごい引出を持ってますよ。もっと女優業をやってほしいですね!」と絶賛していました。

今作のテーマについて武監督は「ME TOO運動が影響しているなと思っています」と話しました。前作とは全く異なるオリジナルストーリーについて「男性と女性の関係性がこれからどうなっていくのかということへの中村さんの意識を強く感じました」と言い、武監督の手掛けているほかの作品にも影響していると語りました。

作品情報

映画『銃2020』

伏見ミリオン座ほか全国公開中

企画・製作:奥山和由

原案:中村文則

監督:武正晴

脚本:中村文則、武正晴

出演:日南響子、加藤雅也、友近、吹越満、佐藤浩市

製作:吉本興業

企画:チームオクヤマ

制作プロダクション:エクセリング

配給:KATSU-do

(c)吉本興業

2020年/日本/カラー/76分/DCP/5.1ch/ヨーロッパビスタ

公式サイト:thegunmovie.official-movie.com

公式Twitter:@GunMovie

公式Instagram:@gun_movie2020

関連記事
モバイルバージョンを終了