2024-03-25

「自分事として観てほしい」杉並区長選挙を記録したドキュメンタリー『映画 ◯月◯日、区長になる女。』ペヤンヌマキ監督に名古屋でインタビュー

 

3月30日より名古屋・今池のナゴヤキネマ・ノイで公開となる『映画 ◯月◯日、区長になる女。』は2022年6月の杉並区長選挙を記録したドキュメンタリー作品です。人口57万人、有権者数47万人という規模の選挙でありながら、わずか187票差で現職区長を破った岸本聡子さんと、彼女を草の根で支えた住民たちに密着しています。監督をつとめたのは東京都杉並区在住のペヤンヌマキさんに名古屋でインタビューしました。(取材日:2024年2月2日)

「ドキュメンタリー魂が沸々と湧いてきました」選挙に興味を持った理由は?

『映画 ◯月◯日、区長になる女。』は2022年の杉並区長選挙を記録したドキュメンタリー作品で、劇作家・演出家のペヤンヌマキさんが監督をつとめています。杉並区長として3期12年在任の現職区長が進めてきた行政主導の再開発、道路拡張、施設再編計画を見直すべきだと立ち上がった住民たちは、ヨーロッパに暮らし、NGO職員として世界の自治体における「公共の再生」を調査してきた岸本聡子さんを区長候補に擁立します。

東京都杉並区在住のペヤンヌマキ監督は自身の住んでいるアパートが道路拡張計画で立ち退きの危機にあることを知って止める方法を調べていて、区長選挙が近づいていることから選挙にボランティアとして参加することになりました。ペヤンヌマキ監督は「岸本さんの候補者としての魅力を伝え、投票率を上げることを目的としたPR動画を作ることを思いつき、選挙期間中に10分ほどの動画を9本上げました」と話しました。また選挙に興味を持ち始めたきっかけとして、ドキュメンタリー映画『NO 選挙,NO LIFE』の主人公・選挙取材歴25年のフリーランスライター畠山理仁さんの著書である「コロナ時代の選挙漫遊記」を読んだことも教えてくれました。映画として発表することになった理由を聞くと「選挙に関わる人の人間模様が面白く、応援している人も魅力的な人が多くて、これは最終的に映画としてまとめたいとドキュメンタリー魂が沸々と湧いてきました」と答えました。

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「みんな自然体で喋ってくれます。そこには自信があります!」

2022年の杉並区長選挙に立候補した岸本さんは投票日2ヶ月前に日本に帰国し、選挙に向けて活動を始めます。ペヤンヌマキ監督に岸本さんの印象を聞くと「年齢も近くて、話しやすくて、人に対して壁を作らない人でした。会ってすぐに昔からの知り合いかのような距離感で接してくれて、出会って2週間くらいで家に泊まり込みで撮影に行きました」と話しました。「岸本さんは『候補者は私じゃなくてもいい。政治家になるのが目的ではなくて、日本の民主主義を取り戻すのが使命だと思っている』とサラっと言っていて、実感がこもっていて、そこがすごく驚きでした」と言い、今までイメージしていた候補者になる人や政治家になりたい人とは真逆のタイプだったと話しました。

『映画 ◯月◯日、区長になる女。』には岸本さんが立候補者として奮闘する姿、不安や葛藤なども映し出されています。ペヤンヌマキ監督は『監督失格』などの平野勝之監督の下でスタッフをしていた頃を振り返り「サブカメラとして監督が聞き出せない本音を聞き出すのが得意でした」と話しました。被写体へのカメラの向け方について質問すると「カメラを小脇に抱えて喋りながら撮っているので、カメラを回していることを意識せずみんな自然体で喋ってくれます。そこには自信があります!」と答えました。さらに被写体としての岸本さんについて「カメラを向けても変わらない、飾らない、本音で話してくれるのが魅力的でした」とカメラを向けた時の印象も教えてくれました。

「区長になって“めでたしめでたし”で終わる映画ではない」「粘って良かったと思いました」

『映画 ◯月◯日、区長になる女。』は2024年1月2日にポレポレ東中野で公開されると、連日満席が続き、3月下旬までのロングラン上映が決まっています。劇場公開の時期が決まった経緯について聞くと2023年4月の統一地方選の取材の後、2023年夏頃にある程度の形にした作品をポレポレ東中野に観てもらったところ「希望のある映画なのでお正月1発目に上映したい」と返事をもらい、劇場公開が決定したそうです。

ペヤンヌマキ監督は「映画にするにあたって、どこまで撮るべきかを悩んでいました」と話し「区議選に弾みをつけるために、区議選の前に上映するのはどうだという案もありました」といろいろな考えがあったことも口にしながら「区長になって“めでたしめでたし”で終わる映画ではないと思っていて、粘って良かったと思いました」と完成した作品に自信を覗かせました。

東京での観客の反応を聞くと「杉並区の方や区外からも来てくれていて、自分の街に置き換えてみてくださっていて『やればできるんだと勇気がもらえました』となどと言ってもらえました」と笑顔で答えました。制作時から「自分事として観てほしい」という思いがあったと言い「杉並区だけの話ではなく、それぞれ自分のこととして感じてくれたのが嬉しいです」と話しました。

取材を続けた杉並区での選挙を振り返り「1人1人の小さなアクションがひとつも無駄じゃなかったんだという選挙でした。何かアクションする人を冷笑する空気がある中で、なんでもいいから1歩を踏み出すことが何かを変えられるという希望を広げていきたいです」と全国での公開に向けての意気込みを伝えてくれました。『映画 ◯月◯日、区長になる女。』は政治に対してモヤモヤとした気持ちを抱えている人にとって希望を感じられる作品です。ぜひ、ナゴヤキネマ・ノイでご覧ください。

ナゴヤキネマ・ノイ

名古屋市千種区今池1-6-13 今池スタービル2F (場所:元・名古屋シネマテークの跡地)

作品概要

『映画 ◯月◯日、区長になる女。』

2024年3月30日(土)よりナゴヤキネマ・ノイにて公開

上映スケジュール

3月30日(土)~4月5日(金) 10:50~(初日はペヤンヌ・マキ監督によるオンライン舞台挨拶あり)

4月6日(土)~4月12日(金) 18:00~

4月13日(土)~4月19日(金) 15:10~

出演:杉並区民のみなさま

主題歌:『黒猫同盟のミュニシパリズム』(作詞・作曲:ブランシャー明日香 歌唱・編曲:黒猫同盟)

音楽:黒猫同盟(上田ケンジと小泉今日子)、向島ゆり子、ブランシャー明日香

プロデューサー:松尾雅人

監督:ペヤンヌマキ

2024年/110分/DCP/日本

製作・配給・宣伝・著作:映画 ◯月◯日、区長になる女。製作委員会

©️2024 映画 ◯月◯日、区長になる女。製作委員会

公式HP https://giga-kutyo.amebaownd.com

公式X @eigakucho

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