「本当は犬山城でも撮りたかった」黒沢清監督『黒牢城』名古屋で松岡ひとみさんシネマトークライブ100回記念ゲスト登壇
映画パーソナリティ・松岡ひとみさんがミッドランドスクエア シネマで開催する人気イベント「月イチシネマトークライブ“松岡ひとみのシネマコネクション」が第100回を迎えました。記念すべきゲストとして登場したのは、映画『黒牢城』の黒沢清監督です。直木賞を受賞した米澤穂信さんの同名小説を映画化した『黒牢城』は、織田信長に反旗を翻した戦国武将・荒木村重(本木雅弘さん)が主人公。謀反によって孤立した有岡城を舞台に、城内で次々と起こる不可解な事件の真相を、地下牢に幽閉された軍師・黒田官兵衛(菅田将暉さん)の知恵を借りながら解き明かしていく、歴史ドラマと本格ミステリーが融合した話題作です。本木雅弘さん、菅田将暉さんをはじめ、宮舘涼太さん(Snow Man)、オダギリジョーさん、青木崇高さんら豪華キャストが集結したことでも注目を集めています。

イベントでは、作品誕生の裏側やカンヌ国際映画祭での反響、豪華キャストとの撮影秘話、映画館への思いなど、ここでしか聞くことのできないエピソードが次々と披露されました。(取材日:2026年6月27日)
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「100回目はこの人しかいない」 黒沢清監督が語る『黒牢城』誕生秘話
2021年9月、コロナ禍で苦境に立たされる映画館を盛り上げたいという思いから始まった「月イチシネマトークライブ“松岡ひとみのシネマコネクション」。月1回と謳いながら、2回、3回と開催した月もあり、約5年間で100回という大きな節目を迎えたことに、松岡さんは「本当に皆さんのおかげです」と感謝を伝え、「100回という記念の回は、どうしても黒沢清監督にお越しいただきたかった」と、この日のゲストに込めた思いを語りました。

客席から大きな拍手が送られる中、黒沢監督が登壇。「昨日までは台風で来られるか心配でしたが、ちょうど間を縫って無事に名古屋へ来ることができました」と笑顔であいさつすると、会場は和やかな空気に包まれました。

カンヌ国際映画祭でのワールドプレミア上映の話題になり、戦国時代を舞台にした作品だけに「海外のお客様にどこまで伝わるのか、不安もありました」と振り返る黒沢監督。しかし実際には、主人公・荒木村重が置かれた状況や人間ドラマは国境を越えて伝わり、「会場では何度も笑いが起きていました。物語を理解しているからこその笑いだったので、とてもうれしかったです」と当時を懐かしそうに語りました。

また、以前から時代劇を撮ってみたいという思いがあったことも明かします。当初はチャンバラ作品を思い描いていたそうですが、『黒牢城』の原作と出会い、その考えは大きく変わったといいます。黒沢監督は「荒木村重という人物には以前から興味がありました。戦国武将の中でも城を捨てて去った人物として知られていますが、だからこそ魅力的な人物だと思っていました」と語り、村重が城を去った理由を大胆な発想で描いた原作の面白さに惹かれ、「これはぜひ映画にしたいと思いました」と映画化への思いを語りました。
6/29〆切 黒沢清監督の初の時代劇映画『黒牢城』オリジナルバスソルト”黒牢塩”を3名様にプレゼント
本木雅弘さん、菅田将暉さん 豪華キャストとの撮影秘話 犬山城も参考に
主人公・荒木村重を演じた本木雅弘さんについて、黒沢監督は「現場では誰にでも気さくに話しかけるフレンドリーでソフトで、とてもサービス精神のある方」と紹介。黒沢監督は撮影の最初の頃に強烈に覚えている出来事として、軍議のシーンの撮影中にカットがかかったタイミングで本木さんが「あぁ向いてない」と言っていたことを明かしました。平気で思ったことをボソッと言う本木さんの姿勢に救われた部分もあったと伝えつつ「最初は少し不安になりました」と笑顔で振り返ると、会場は大きな笑いに包まれました。

黒田官兵衛を演じた菅田将暉さんについては、『Cloud クラウド』でもタッグを組んだことから「100%信頼していた」と絶賛。同じセリフでも真実にも嘘にも聞こえ、さらにはどちらとも受け取れる芝居ができる俳優だと、その表現力の高さを称えました。また、現在放送中の大河ドラマ『豊臣兄弟!』で竹中半兵衛を演じる菅田さんについて話題が及ぶと、黒沢監督は当時の”ここだけのエピソード”も披露し、会場を沸かせました。映画では黒田官兵衛、大河ドラマでは竹中半兵衛と、戦国時代を代表する二人の軍師を演じる菅田さん。異なる作品で描かれるそれぞれの人物像を見比べてみるのも、本作の楽しみ方の一つと言えそうです。

さらに、カンヌ国際映画祭で宮舘涼太さんが披露し、大きな話題となった華麗なターンにも話題が及びました。黒沢監督によると、あのターンは本木さんから「やってみたらどうか」と提案されたものだったそうで、監督自身もそのやり取りを現場で目撃していたとのこと。カンヌで多くの注目を集めたワンシーンの舞台裏に、客席からは驚きの声と笑顔が広がりました。

映画『黒牢城』の主な舞台は荒木村重が織田信長に反旗を翻し、籠城した有岡城です。有岡城のシーンは、京都から日帰りで行ける関西各地のいくつかの城で撮影を行ったことも紹介しました。黒沢監督は「犬山城でも撮影を考えましたが、(京都からの)距離の問題で断念しました」と振り返りながら、「犬山城を参考に、CGを作ったりしています」と、愛知県ゆかりの犬山城に纏わるエピソードも飛び出しました。
ファンならではの質問が続々 地下牢の床の凸凹は映画オリジナル「映画館は人生のすべてを学んだ場所」
質疑応答では、作品を鑑賞したファンならではの鋭い質問が相次ぎ、作品を鑑賞した後だからこそ気付ける制作秘話に、来場者は熱心に耳を傾けていました。作品への深い理解を感じさせる質問が続き、黒沢作品を愛するファンと監督との濃密な時間となりました。

黒沢作品に対する深い見識を持つファンの方はこれまでの作品に通じる部分を感じた『黒牢城』のシーンを挙げながら「これまでの黒沢作品との共通点を意識しているのか」という質問には、「毎回、新しい作品を作るつもりで取り組んでいます」と答え、「皆さんに言われて初めて『そうかもしれない』と気付くこともあります」と笑顔を見せました。

さらに、地下牢セットの美術や劇中で使われた茶道具についてなど、細部にまで及ぶ質問にも一つひとつ丁寧に回答しました。劇中の重要な舞台となる地下牢のセットについて、地下牢と言っても、天守閣の一番下にある倉庫のような場所であることを補足し、黒沢監督は「戦国時代の土の地面は平らではなかったはず」と考え、美術スタッフが土の質感を生かして床をあえて凸凹に仕上げたのは映画オリジナルの描写であることを明かしました。実際に役者たちは足元に気を配りながら芝居をしていたそうで、映画ならではの空間づくりへのこだわりがうかがえました。村重は官兵衛の知恵を借りて有岡城で次々と起こる不可解な事件の謎を解いていくのですが、村重と官兵衛の駆け引きめいた対話の面白さや変わっていく2人の関係性、地下牢ならではの闇と光を使った画が多くを語る黒沢節を感じられる部分にもぜひ注目してみてください。

イベントの最後、松岡さんから「黒沢監督にとって映画館とはどんな場所ですか」と尋ねられると、監督は静かにこう語りました。「映画館は、僕にとって人生のすべてを学んだ場所でした」と映画館への思いを伝えました。映画館は作品を見るだけの場所ではなく、知らない人と一緒に笑い、感動し、ときには自分だけ違う感じ方をすることもある場所。エンドロールまで残る人もいれば途中で席を立つ人もいる、そんな空間の中で、自分が社会の中でどのような存在なのかを感じることができたと振り返ります。「たった2時間ほどの中で、人生のさまざまな経験ができる場所。それが映画館なんです。」という黒沢監督の言葉に、会場からはこの日一番とも言える大きな拍手が送られました。

最後は、100回記念イベントならではの来場者とのフォトタイムも実施。黒沢監督も笑顔で応じ、客席にはたくさんの笑顔があふれました。作品への思いと映画館への愛情、そして映画ファンとの温かな交流が詰まった「月イチシネマトークライブ“松岡ひとみのシネマコネクション」Vol.100は、大きな拍手に包まれながら幕を閉じました。
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作品概要
6月19日(金) ミッドランドスクエア シネマほかにて 全国公開

原作:米澤穂信「黒牢城」(角川文庫/KADOKAWA 刊)
監督・脚本:黒沢清
音楽:半野喜弘
出演:本木雅弘 菅田将暉 吉高由里子 青木崇高 宮舘涼太 柄本佑 ユースケ・サンタマリア 吉原光夫 坂東龍汰 近藤芳正 矢柴俊博 木原勝利 河内大和 吉岡睦雄 上川周作 前田旺志郎 坂東新悟 荒川良々 渋川清彦 渡辺いっけい / オダギリジョー
<ストーリー>
荒木村重(本木雅弘)は暴虐な織田信長のやり方に反発し、籠城作戦を決行する。城は織田軍に囲まれ孤立無援に。生と死に向き合う戦国の世にあって、村重は殺さずの信念を守る武将だった。村重は妻・千代保(吉高由里子)を心の支えに、城と人々を守ろうと苦心する。そんな時、城内である少年が殺される事件が発生。その後も怪事件が次々と起こる。容疑者は、密室と化した城内に居る家臣や身内の誰か。城外は敵軍。城内は裏切り者。誰もが疑心暗鬼になっていく中、村重は牢屋に囚われた危険な天才軍師・黒田官兵衛(菅田将暉)と共に謎の解決に挑む。謎の先にある黒幕の狙いと、事件の驚きの真相とは―。
制作プロダクション:松竹撮影所 制作協力:松竹映像センター
配給:松竹
製作幹事:松竹/TBS テレビ
©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会





















