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2019-07-23

住宅顕信の生涯を描いた映画『ずぶぬれて犬ころ』 初の劇映画に挑戦した本田孝義監督に名古屋でインタビュー


 

7月27日から8月2日まで名古屋シネマテークで公開となる映画『ずぶぬれて犬ころ』は俳人・住宅顕信(すみたくけんしん)の生涯を描きながら、いじめにあっている中学生が住宅顕信やその俳句に興味を持っていく物語です。「船、山にのぼる」「モバイルハウスのつくりかた」などのドキュメンタリー映画を製作してきた本田孝義監督にとって初の劇映画となった本作について、企画の始まりから完成まで、名古屋での公開を間近に控えた気持ちなどをインタビューしました。(取材日:2019年7月15日)

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住宅顕信への熱い想いから初の劇映画に挑戦

映画『ずぶぬれて犬ころ』は30年前に25歳という若さでこの世を去った俳人・住宅顕信の生涯と彼の俳句や人生に興味を持ったある中学生の変化を描いた劇映画です。住宅顕信は岡山で生まれ育ち、中学卒業後に調理師を目指してレストランで働いたり、清掃員になるなどしながら自由律俳句や宗教に興味を持ちます。22歳で僧侶となり、23歳で急性白血病を発症、入院中に長男が誕生するも離婚、病室で育児をしながら俳句作りに没頭し、数々の俳句を生み出しました。彼が生涯で遺した281句や彼の激動の人生から「生きろ」というメッセージを感じた本田孝義監督からオール岡山ロケで完成させた本作について話を聞きました。

本田監督は2002年に精神科医の香山リカさんが発表した「いつかまた会える―顕信:人生を駆け抜けた詩人」を読んで、住宅顕信を知ったと話しました。本田監督は「2014年頃、僕が落ち込んでいた時期に(住宅顕信の)『ずぶぬれて犬ころ』という句が頭に思い浮かんで、改めて興味を持ったのが映画を作る最初の出発点です」と教えてくれました。これまで「船、山にのぼる」「モバイルハウスのつくりかた」などのドキュメンタリー映画を製作してきた本田監督は当初、ドキュメンタリー映画を作ることも考えたそうですが「中心となる人がいないドキュメンタリーでは映画として面白くなるような気がしなかった」と住宅顕信の人生を伝えるより良い方法として劇映画を選んだと話しました。

劇映画はドキュメンタリー映画に比べて多くの制作費が必要となるため「先に脚本を書いて、少しずつ応援してくれる人が集まってきて、クラウドファンディングも行って…」と苦労があったことを話し「岡山の実家を売りました。それしか手段がなかったんです」と強い想いを持って映画製作に取り組んでいたことを教えてくれました。本田監督は2013年4月に開業1周年を迎えたことを記念して製作された渋谷ヒカリエを舞台にしたオムニバス映画『ヒカリエイガ』でプロデューサーをつとめた経験から「無謀なことに僕もできるんじゃないかと勘違いをしたというか・・」と初の劇映画に挑戦したきっかけを明かしました。また主演の木口健太さんや脚本の山口文子さん、撮影の鈴木昭彦さんなど『ヒカリエイガ』で出会った方々が本作に参加している点も興味深かったです。

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スタッフのサポートと主演・木口健太さんの誠実な役作り

脚本を担当した山口文子さんについて「映画に登場する句を選ぶのは山口さんの歌人としてのセンスにまかせたのですが、脚本を読んだときにさすがだなと思いました」と本田監督が意見をすることはなかったと話しました。また本田監督としては住宅顕信の生涯を描く伝記映画にするつもりだったところ、山口さんが主人公にいじめられている少年が登場するプロットを提案してくれたそうで「悩んだ末にGOを出したんです」と驚きながらも提案を受け入れたと教えてくれました。

撮影監督をつとめた鈴木昭彦さんは井口奈己監督の『人のセックスを笑うな』(2008年公開)『ニシノユキヒコの恋と冒険』(2014年公開)などの撮影を担当していて、本作ではたくさんのサポートをしてくれたそうで、本田監督は「おんぶにだっこでした」と感謝の気持ちを表していました。

主演の木口健太さんの撮影前や撮影中の様子を聞くと「とても真面目に役作りに取り組んでくれたと思います」と話し、住宅顕信のご両親に会いに行ったり、白血病について勉強したようで、本田監督は木口さんの役作りのためのリクエストに全力で応えていたそうです。本田監督は「木口さんは実在の人物を演じるのが初めてで、すごいプレッシャーを感じていたそうです。『顕信さんを知る人に失礼のない芝居をしたい』と言っていました」と教えてくれました。木口さんは13日間という短い撮影期間で15歳から白血病でこの世を去る25歳までを演じるために「撮影中はサラダしか食べていなくて、みんな心配していました。撮影が順撮りではなかったので、大変だったと思います」とその真面目さや誠実な人柄を話してくれました。


劇中で木口さんが来ている作務衣や法衣、万年筆などは住宅顕信の遺品だったそうで「ご両親が保管していて、木口さんが住宅家に行った際に作務衣を着たら奇跡的に丈がピッタリあったんですよ」とそのままお借りして撮影に使ったことを教えてくれました。

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名古屋での公開2日目に本田監督と脇田敏博さんによる舞台挨拶

俳句というと五七五や季語があるものというイメージがありますが、五七五にとらわれない自由律俳句を描いた劇映画は少なく、住宅顕信を描いた作品は本作が初めてです。「レントゲンに淋しい胸のうちのぞかれた」「病んでこんなにもやせた月を窓に置く」など闘病中の方の心に響く俳句だけでなく、「若さとはこんな淋しい春なのか」「気の抜けたサイダーが僕の人生」など生きにくさを感じている方の心にも訴えかけてくる俳句も多く、映画のストーリーにあわせて住宅顕信の33の俳句をスクリーンを通して知ることができる作品です。

名古屋シネマテークでの公開2日目には本田監督と教頭先生役の脇田敏博さんが舞台挨拶に登壇します。教頭先生はいじめられっ子の少年に住宅顕信の『未完成』を渡す役どころで、脇田さんについて本田監督は「名古屋の俳優さんで岡山で行われた本作のオーディション、撮影に名古屋から来てくれました」と話しました。

名古屋での公開記念舞台挨拶(本田孝義監督と脇田敏博さん)

日時:7月28日(日)10:30~の回

場所:名古屋シネマテーク

Address:名古屋市千種区今池1-6-13 今池スタービル2F

名古屋市千種区今池1-6-13

本田監督は「夏休み期間中なので中学生など若い人にも、親子などで観に来てもらいたいなと思います」と名古屋での公開に向けて想いを伝えました。



作品概要

映画『ずぶぬれて犬ころ』

2019年7月27日~8月2日 名古屋シネマテークで公開(10:30~1日1回上映)

出演:木口健太、森安奏太、仁科貴、八木景子、原田夏帆、脇田敏博、坂城君、柳田幸則、渡辺厚人、金本保孝、田中美里

監督:本田孝義

原作:横田賢一「生きいそぎの俳人 住宅顕信―25歳の終止符」

脚本:山口文子

撮影:鈴木昭彦

音楽:池永正二

2018年/日本/100分/DCP/配給:パンドラ

©戸山創作所

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映画『ひかりのたび』名古屋での公開初日の舞台挨拶に主演の高川裕也さんと澤田サンダー監督が登壇

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