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2019-02-05

「母ちゃんのお陰で脚本がかけた」映画『洗骨』照屋年之監督に名古屋でインタビュー


 

2月9日に公開となる映画『洗骨』は「ガレッジセール」のゴリさんが本名である照屋年之名義で監督し、沖縄のある地方で行われている「洗骨」という風習によってバラバラだった家族が再生していく姿を描いた感動的な物語です。「洗骨」を題材に映画を作ることになった経緯や映画を通じて伝えたい想いなど、照屋監督に名古屋でインタビューをすることができました。(取材:2019年1月24日)

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リアルな洗骨シーンは生き証人と動画のおかげ

映画『洗骨』は土葬や風葬などを行った数年後に棺を開けて、死者の骨を海水や酒で洗い、再度埋葬する沖縄のある島で行われている風習です。照屋監督は「昔は沖縄全土で行われていたことに衝撃を受けました。ぼくの祖先はやっていたはずです」と語り、今では沖縄の人でも知らない人が多いと教えてくれました。照屋監督は2000年に発表された短編映画『born、bone、墓音。』の撮影で「洗骨」を知り、急遽映画の題材にすることを決めました。今回、長編を撮るにあたり「短編から膨らませたわけではなく全く別の家族の物語を描いた」と話していました。

また「洗骨」についてリサーチを深めるため「生き証人を探して、片っ端から会いに行き、事細かに聞きました」と粘り強く取材をしたことを明かし、「ローラー作戦で動画に辿り着きました」と実際の映像を観たことで、リアルな描写が可能になったことを教えてくれました。

実際の洗骨の映像を観た感想を聞くと「全然、怖くなかったです。おばあちゃんが歌を歌って、泣きながらひとつひとつ素手で洗っていくんですよ。頭を優しく撫でるように頭蓋骨を洗い、肩をさするように肩の骨を洗っていく、(その行為は)愛情にしか見えなかったので、この映画は絶対に怖くならないと確信しました」と洗骨に関わる人の人間関係や母親に対する愛情をきちんと表現したことを教えてくれました。

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奥田瑛二さんが妻の死から立ち直れない情けない男を好演

映画『洗骨』の舞台は沖縄の離島である粟国島で、4年前に母親が亡くなった後に一人で暮らす父親のもとに「洗骨」のために長男と長女が帰ってきます。父親役の奥田瑛二さんと映画『GOEMON』(2009年公開)で共演したという照屋監督は「笑いながらお酒を飲む時に寂しい目を一瞬見せることがあって、情けない父親役を演じてもらうことで面白い化学反応が見られるのではないかと思いました」と主演のオファーをした理由を語り「世間も見たことがない情けない奥田瑛二が見られるのではないでしょうか」と本作での奥田さんに自信をのぞかせました。

キャスティングはスタッフみんなで案を出し合って決めていったそうで「全員がいいねっていうのがこの3人でした」と長男役の筒井道隆さんと長女役の水崎綾女さんについても「スタッフ総意でオファーしました」と教えてくれました。現場での役者さんの様子を聞くと「奥田さんは『もっと髪の毛ボサボサのほうがいいよね』って言ってつけ毛をつけてきたりしていました」と見た目も含めて、妻の死から立ち直ることができない情けない男を自ら作りこんで来てくれたことを明かしました。

また「筒井(道隆)さんはずっとテープレコーダーでイントネーションのついたセリフを何度も聞いていました」と沖縄の方言をマスターしようと努力していたそうで、妊婦を演じていた水崎さんについても「撮影休止の時もずっと妊婦姿で過ごしていて、まるで妊婦さんのような歩き方になっていました」と役者さんがそれぞれに作品のために動いてくれていたことに感謝の気持ちを述べていました。

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エンドロールに入れた母親の名前

照屋監督は「母親が死ぬイメージがなかったんですよね」と実の母親を亡くした時のことを振り返り、お通夜で線香番をしながら母親に想いを巡らせ「命を繋いでくれた何万年前の祖先に感謝の気持ちが芽生えてきました」と話しました。

長編映画を撮ることになった際も母親のことを思い浮かべたそうで「死ぬとは、生まれるとは、命が繋がるというのはどういうことなのかが言葉になって浮かんできて、母ちゃんのお陰で脚本をかけたような気がします。エンドロールに母親の名前を入れてさせてもらいました」と語りました。



作品情報

『洗骨』

2月9日(土)よりセンチュリーシネマほかにてロードショー

出演:奥田瑛二 筒井道隆 水崎綾女 大島蓉子 坂本あきら 鈴木Q太郎 筒井真理子

監督・脚本:照屋年之

主題歌:「童神」(歌・古謝美佐子)

製作:『洗骨』製作委員会

制作:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

制作プロダクション:ファントム・フィルム

配給・宣伝:ファントム・フィルム

©『洗骨』製作委員会

公式 HP:http://senkotsu-movie.com/

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