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2018-09-07

安田顕さんが悍ましくピュアな男に 映画『愛しのアイリーン』吉田恵輔監督に名古屋でインタビュー


 

9月14日に公開となる映画『愛しのアイリーン』は20年以上前に「ビッグコミックスピリッツ」で連載されていた新井英樹さんの同名マンガが原作です。閉鎖的な雪国の田舎の実家に暮らす42歳の童貞男が突然フィリピン人と結婚し、年老いた母親との関係がさらに拗れて波乱が起こる物語です。13年前の映画監督デビュー以来、ずっと映画化を望んていた吉田恵輔監督が名古屋でインタビューに応じてくれました。

主演の安田顕さんやフィリピンオーディションで見つけた女優のナッツ・シトイさんについて、雪山での撮影の苦労なども話してくれました。(取材日:2018年8月31日)

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原作が描く「母性」に号泣した吉田恵輔監督が悲願の映画化

映画『愛しのアイリーン』の原作は『宮本から君へ』『ザ・ワールドイズ・マイン』と並ぶ新井英樹さんの代表作とされる傑作マンガで1995年に連載が始まりました。吉田恵輔監督は原作マンガを始めて読んだときに「母性に号泣した。漫画の描写に切なさや痛みを感じて涙が止まらなかった。自分の中でここまで感情を揺さぶられたものがなかった。」と語り、13年前の映画監督デビューからずっと映画化の機会を探していたけれど、なかなか実らなかったことを教えてくれました。

昨年12月に映画会社に持ち掛けたところ企画が通り、すぐに脚本を制作し、その後、今年2月に公開された映画『犬猿』の撮影が終わった5月にフィリピンオーディションと映画化が決まってからはものすごいスピードで進んでいったことを話していました。

吉田監督は今年1月に名古屋で映画『犬猿』のインタビューに応じてくれましたが、この直前にフィリピンでの撮影を行い、翌日にはロケハンのために新潟県長岡市の雪山に行くなど、大変なスケジュールだったことを振り返っていました。

【2/10公開】映画『犬猿』吉田恵輔監督に名古屋でインタビュー 愛知・岐阜での上映映画館

安田顕さんは「奥深い役者さん」ヒロインのナッツ・シトイさんは「そのまま」

主人公の岩男は閉鎖的な雪国の田舎の実家に暮らす42歳の童貞男で、原作では2メートルを超える大男なのですが、映画化にあたりプロデューサーから「岩男役に安田顕さん」という提案を受けた吉田監督は「安田さんを超える人は見つからない」と感じたそうです。現場での安田さん様子を訊ねると「しっかりと考えて、理解して役を作ってきて、常に役のままでいるので人が近寄れないくらいの雰囲気でした。」と話していました。

また、岩男が憧れの女性とのデートが決まって喜ぶシーンで吉田監督から安田さんに「別のパターン何かあります?」とリテイクをお願いしたところ「誰も予想しない動きをされてその発想力が可笑しいと思って、自由にやってもらいました。」と笑いながら話していました。

岩男が女性の寝顔を見ながら自慰行為をするシーンについて話が及ぶと「悍ましいですよね。前の夜からどんな表情をしようと考えていたのかと思うと気持ち悪い。」と笑わせつつ、岩男の「悍ましさ」と「こぼれ落ちたピュアさ」を演じていることについて「(安田さんは)奥深い役者さんですよね。」と役者としての表現の面白さを賞賛していました。

岩男と結婚するフィリピン人女性を演じたナッツ・シトイさんとの出会いについて「(オーディションの)部屋に入ってきた瞬間に、漫画から飛び出してきたような明るさがあり、芝居も圧倒的に素晴らしくて、見つかった瞬間に、勝ったと思った!」と語りました。

オーディションのタイミングがクランクインの2ヶ月前だったため「アイリーンがいない可能性もあるなと思っていた。」と当時の不安な気持ちを振り返りつつ、原作とシンクロするようなナッツさんの表情についても「(原作に似せようと)意識していないけれど、彼女が持っていたもので、彼女は特別なことをしていない。」とアイリーンを演じたナッツさんを発見できたことで作品の成功を確信したそうで、野球に例えて「前の回で仲間が10点入れてくれてて、ピッチャーが投げるような感じ。」と表していました。

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少子高齢化、田舎の嫁探しから姥捨てまで

映画化にあたり吉田監督は「原作者さんと会って、好き勝手やって良いという条件がかいとをやらないと決めています。」と話し、今作の原作者の新井さんからは「監督の好きなように」という言葉をもらっていたそうです。

田舎独特の閉塞感や奥手の独身男の鬱屈した日々、高齢の親との殺伐とした関係、フィリピンでの嫁探しや連れ帰ってからの様子、観ていて楽しい気持ちになる物語ではないのですが、ラストシーンに向けて描かれる大切な人への想いには涙が溢れます。吉田監督はラストシーンをクランクアップの2日前に書き換えるなどもしたそうで、アイリーンが岩男の母親を背負って歩く雪山のシーンは『楢山節考』を彷彿とさせる名シーンです。

撮影は新潟県長岡市の栃尾という日本の屈指の豪雪地帯で行われ、夏のシーンで撮っていた家の前に2メートルの雪が積もっていたため、雪の上を歩くシーンをどうやって撮るかに頭を悩ませたそうです。除雪車も使ったそうですが「(スタッフ総出で)雪搔き大会みたいになって、なんか楽しかったです。」と振り返っていました。



作品概要

映画『愛しのアイリーン』

9月14日(金)よりTOHOシネマズ名古屋ベイシティほかにてロードショー

主演:安田顕×監督:吉田恵輔×原作:新井英樹

息子と嫁と姑。国境も常識も超える、戦慄のラブ&バイオレンス!

出演:安田顕 ナッツ・シトイ 河井青葉 ディオンヌ・モンサント 福士誠治 品川徹 田中要次/伊勢谷友介 木野花

監督・脚本:吉田恵輔

原作:新井英樹「愛しのアイリーン」(太田出版刊)

主題歌:奇妙礼太郎「水面の輪舞曲」(WARNER MUSIC JAPAN\HIP LAND MUSIC CORPORATION)

配給:スターサンズ

URL:http://irene-movie.jp/

©2018「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ (R15+)

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