toggle
2017-12-06

【12/9公開】映画『ビジランテ』入江悠監督インタビュー 10年越しのオリジナル作品


 

12月9日に公開となる映画『ビジランテ』は埼玉県のとある田舎町が舞台になっている入江悠監督によるオリジナルストーリー。父親の死をきっかけに30年ぶりに再会した三兄弟が土地の相続を巡り、3人の運命が錯綜していきます。長男の一郎を大森南朋さん、次男の二郎を鈴木浩介さん、三男の三郎を桐谷健太さんが演じ、人気実力を兼ね備えた3人のトリプル主演でも話題です。映画『ビジランテ』の監督・脚本の入江悠監督が名古屋に来られた際にインタビューをしました。久しぶりのオリジナル作品となった本作について、いろいろなお話を聞きました。(取材日:2017年11月20日)

スポンサーリンク

「自警団」を意味するタイトル

映画のタイトルとなっているビジランテとは自警団を意味する言葉で、入江監督は元々「自警団というものに興味があって、20代の時に一度脚本に書こうと思って挫折した。地方都市を切りとると日本全国や世界(に通ずる)普遍的なテーマが描けるのではないかと思い、2015年に時間ができた時に一気に書いた。」と話してくれました。監督自身は男2人兄弟だったそうなのですが、2人だと物語が硬直してしまうが、3人だとサスペンスが生まれやすいと男三兄弟の話にしたと語っていました。

経験達者な3人による緊張感のある現場

トリプル主演の3人が演じているのは子供の頃に兄弟3人で起こした父親に対するある出来事をきっかけに突然失踪した長男、父親の跡を継いだ市会議員の次男、地元のチンピラの下でデリヘルの経営を任されている三男と三人三様のキャラクターです。映画の中で、三兄弟が離れていた30年の間に兄弟それぞれにどんなことがあったのかはほとんど描かれていません。普通の俳優だったら戸惑ってしまうかもしれないところなのですが、入江監督は「経験達者な俳優さんなので(細かな)質問はしないで、監督が自分で書いた脚本だし地元で撮るんだったらそこに何かがあるんだろうと信じてくれたんだと思う。」と振り返りました。桐谷さんは「最初に深谷市の空気を浴びたときにすっと役が入ってきた感じがした。」と話していたそうです。


入江監督は「日本映画は説明が多かったりお客さんにわかりやすくしたりするのだけど、そういうのは全然無視してやろうと思っていた。」と語り「この3人だからこそ、過剰な説明ではなくて表情や関係性で見せられることを最初から期待していた。」と話していました。

スポンサーリンク

中国人コミュニティとの対立

映画『ビジランテ』では次男の二郎が団長をつとめている自警団と中国人コミュニティとの対立も描かれています。

入江監督は『SR サイタマノラッパー』シリーズの中で少し描かれている外国人労働者について調べているうちに自分の地元にも同じようなことがあり、群馬にはブラジル人が8割を占める街があることをあげ、「(取材をしたときに)意外と知られていないだけで身近にそういうの(外国人労働者の問題)はあるということに衝撃を受けた。」と教えてくれました。

吉村界人さん演じる中国人コミュニティに強い苛立ちを感じている若者が自警団に入団してある事件が起きるのですが、入江監督は「僕は10代の時、すごく暗くて引きこもりみたいな生活してたんで、(もし)今、10代だったらこの映画に出てくる吉村界人くんみたいな青年の道を歩むだろうなと思ったんですよね。(インターネットからの)一方的な情報だけで動いてしまう怖さと言うのはあるのではないかという気がしました。」と自身の経験を重ねながら話してくれました。

スポンサーリンク

入江監督の地元・深谷で撮影した理由

映画『ビジランテ』の撮影は入江監督の地元である埼玉県深谷市で撮影しているのですが、脚本を書いているときは架空の都市として書いていたそうです。入江監督は「撮影場所を探しているうちに、やっぱりこれは地元で撮らなきゃいけないと思った。」話し「家や家族を描くことは自分のルーツを見つめ直す行為なので、知らない土地でやるよりも自分の育った土地でこれまでお世話になった人の協力で作っていた方が嘘がなく切実なものになる気がした。」と深谷での撮影を決めた理由を教えてくれました。

 

10年前の自分や映画との向き合い

映画『ビジランテ』では入江監督が10年前に自主制作した映画『SRサイタマノラッパー』で使ったのと同じ場所で撮影したシーンがあるそうです。入江監督は「同じ風景を10年前に撮っているんですけど、この10年の間に自分は映画とどう向き合ってきたのか同じ風景を撮るときに問われる感じがしてそれがすごく刺激的だったですよね。」と話し、「使いやすいから地元を使っているわけではなくて、常に自分に返ってくるですよね。」と地元で映画を撮影することの意味を教えてくれました。

スポンサーリンク

深谷のフィルムコミッションとのライバル関係

深谷での撮影を行うにあたって、入江監督はずっと疎遠になっていた深谷のフィルムコミッションの担当者と和解するためにお酒をもって行って手打ち式のようなことをしたと話しいていました。深谷のフィルムコミッションの方について「すごく面倒くさいおっちゃん、メジャー映画が大嫌いな人」と言い、入江監督がメジャー映画を撮った際に一悶着あったようです。
しかしその方は塚本晋也監督の『野火』やインディペンデントの映画等を世の中に送り出している方で、『ビジランテ』を観て「お前まだ忘れてねーなぁ」などと言って、すごく喜んでくれたと教えてくれました。
深谷のフィルムコミッションは『SRサイタマノラッパー』と同じ頃に立ち上げられていて、キャリアは入江監督と同じくらいであるため変なライバル関係であると話しながら「映画好きな人が地元に1人でもいるのはとても心強いですよね」と笑顔を見せました。

オリジナル作品はマイルストーン

予算やスケジュールが豊かな現場ではないにもかかわらず、企画や脚本の内容をみて乗ってくれた方が集まって作ったそうで「その人たちに完成したときにやって良かったと言ってもらえるかどうかはすごく問われるので、そういう意味では僕自身がずっと緊張していた。」と話していました。
映画『ビジランテ』は脚本を書くのに時間をかけて取材をして10年ほどかかったそうで、次の作品を書くまでまた10年かかるかもしれないと言いながら
「昔の作品と比べられたときに先に進んだなとかちゃんと掘り下げたなというふうに指標になるのはオリジナルの作品だと思うので、自分の原点に帰る作業はし続けたいなと思います。」とオリジナル作品への想いを語ってくれました。

スポンサーリンク

作品概要

『ビジランテ』

2017年12月9日(土)より テアトル新宿ほか全国ロードショー

幼い頃に失踪した長男・一郎、市議会議員の次男・二郎、デリヘル業雇われ店長の三男・三郎。別々の道、世界を生きてきた三兄弟。父親の死をきっかけに、失踪していた一郎が、30年振りに突然帰ってくる。再会した3兄弟の運命は再び交錯し、欲望、野心、プライドがぶつかり合い、事態は凄惨な方向へ向かっていく――。

出演:大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太、篠田麻里子、嶋田久作、間宮夕貴、吉村界人、岡村いずみ、菅田俊

脚本・監督:入江悠

R15+

https://vigilante-movie.com/

©2017「ビジランテ」製作委員会

スポンサーリンク
関連記事