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2017-09-11

あいち国際女性映画祭『彼らが本気で編むときは、』トークイベントに荻上直子監督とはるな愛さん登壇


2017年9月6日から5日間の日程で開催されたあいち国際女性映画祭2017が閉幕しました。メイン会場となった名古屋市東区のウィルあいち、サテライト会場のミッドランドスクエアシネマ、また愛知県内の4つの会場で映画の上映やトークイベントが行われ、たくさんの方々が様々な映画を楽しまれました。

期間中に『彼らが本気で編むときは、』の上映と上映後に行われたトークイベントを取材してきました。この作品は聴覚や視覚に障害がある方にも楽しんでいただけるように日本語の字幕がついていて、シーン・ボイスガイドという音声ガイドを聴きながら映画が観られる携帯ラジオの貸出も行っていました。荻上直子監督とはるな愛さんが登壇したイベントの様子をレポートします。(取材日:2017年9月8日)

映画『彼らが本気で編むときは、』

映画『彼らが本気で編むときは、』は2017年2月25日公開された作品で生田斗真さんがトランスジェンダーの役を演じたことでも話題になりました。

シングルマザーの母親から育児放棄された小学生のトモが叔父のマキオとマキオの恋人でトランスジェンダーのリンコと共同生活をはじめる物語です。当初はLGBTに偏見のあったトモが、リンコと接し、マキオやリンコの母親たちの気持ちを聞くうちに、徐々に変化していきます。

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上映後のトークイベントに登場した荻上直子監督とはるな愛さん

映画の上映後、スクリーン前のステージに登場した荻上直子監督とゲストのはるな愛さん。映画の感想を求められたはるなさんは「リンコの人生と自分の人生を重ね合わせて、やっぱりそうなんだと切なくなった」「リンコのパートナーのマキオのような人が実際にいたらいいなぁと思った」などと話していました。

トランスジェンダーという難しい役を演じた生田さんについて荻上監督は「キレイな人にやってもらいたいと思ってけれれど、(生田さんが)すごい鍛えていてムキムキで、しなやかな女性に全然ならなかった」などと苦労話を披露してくれました。

当初は髪にエクステをつけるなども考えていたそうですが、生田さんが美しすぎて水商売の女性に見えてしまったためにショートカットにしたり、体のラインがしなやかにみえるように衣装も8割はオリジナルで作ったとか。またエレガントな所作指導の先生に来てもらって、バッグの持ち方、座り方などの動きを指導してもらったそうです。しかし、生田さんが動きばかりを気にしぎて中身がついていってないと感じた監督は生田さんを飲みに誘い、「(撮休の日に)5時間寝て、19時間リンコさんについて考えて」と言ったら、休み明けから生田さんのお芝居がガラッと変わったそうです。

映画に描かれた4人の母親の姿

荻上監督は5年ぶりの新作となる本作を撮ったきっかけとして、トランスジェンダーの子供のために偽乳を作ってあげたお母さんの新聞記事を読み、会いに行ったことだと話していました。子供の全てを受け入れているすごく素敵なお母さんだったそうで、映画では田中美佐子さん演じるリンコのお母さんとして登場しています。リンコの性を全て受け入れ、ありのままのリンコを守ろうをする姿は、息子を持つ母親として涙がとまりませんでした。反対に自身の性に悩みを抱えるトモのクラスメイトの母親は性的マイノリティを激しく拒絶していて、対照的な2人の母親から、子供にとって理解者の存在の大きさを感じました。

そして、夫への不満を抱えながら子供に接してきたマキオの母親、その母親に反発してシングルマザーになり育児放棄をしてしまうトモの母親のエピソードも描かれていて、映画にはLGBTだけでなく、母と子、家族や介護の問題、学校内のイジメなど様々な要素が詰め込まれていました。

荻上直子監督・第2章の始まりと言われている本作、5年ぶりの映画となった理由について話が及ぶと、5年前に事実婚のパートナーとの間に双子の女の子を産んだためではなく、脚本書いてプロデューサーにみせても面白くないと何度もボツになってしまっていたと教えてくれました。やっと通った企画が『彼らが本気で編むときは、』で5年分のいろいろを詰め込んだと語っていました。

はるな愛さんが戸籍を変えない理由

映画『彼らが本気で編むときは、』の中で、幼い頃からトランスジェンダーとして悩んでいたリンコは体の手術は全て終えていて、時が来たら戸籍を女性に変えるつもりでいます。

はるなさんもトランスジェンダーとして体の手術はすべて終えているのですが、戸籍は男性・大西賢示のままでいることについて、荻上監督が理由をたずねる一幕がありました。

はるなさんは「もちろん女性になりたいけど、なりきれない現実を知っていて、どんどん女性になっていくと、次を求めてしまう。今まであった現実や、今までの思い出を消したくなくて、私はこのままで行くと思う。」と胸の内を教えてくれました。LGBTの中にもいろいろをあって、自分の性がわからないQもあるし、トランスジェンダーで心が女性で体も女性になったけれど女性が好きという人もいると話していました。LGBTであってもそうでなくても、みんな違うのが当たり前だということを改めて感じたトークイベントでした。

はるなさんの深い話や気持ちを聞いた荻上監督は「脚本を書いているときに会いたかった」と言い、はるなさんは「監督の映画に出たい」と熱望し「できれば女性、無理ならオネエ、それでも無理ならオッサンで」と伝えると、監督から「オファーします!」と返答がありました。この日、会場にいたお客さん全員が証人です。荻上直子監督の次回作でのはるな愛さんの出演を楽しみにしたいと思います。

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